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2022年4月8日金曜日

「書面にかえて」の誤解


集会せずに決議をする?
 

 コロナ騒動で非常事態が続いています。年度末の総会が延期のまま開催日時が決まらず、決算報告も新役員の引継ぎもできずに組合運営に支障をきたしています。この時期、早く総会を開きたいという理事長もいることでしょう。

どうしたら総会が開けるのかと理事は頭がいたいところでしょう。
とあるマンションのことです。そのマンションの管理組合の理事は、以前に管理会社の担当者から言われたことを思いだしました。「集会することなく、書面に変えて議決することができますよ」「全戸に議案を送付し、書面で議決してもらう、過半数あれば議案承認ということです」なるほど。総会を開かなくても、「書面で決議」する方法で決議ができるのだ。と思ったことでしょう。

 この理事は、早速理事長にこのことを伝え、早急に書面による決議を実行するよう進言しました。場所、日時を指定せず、集会することなく決議ができるなら都合がいいとばかりに理事長はその準備にかかりました。でも、これダメです。りっぱな区分所有法違反ですから。この理事は、管理会社の担当者の本意を曲げて、都合のいいように解釈したようです。もっとも、「書面にかえて決議ができる」これ自体は正解です。

ただし条件があります。書面にかえての決議とは。では区分所有法ではどう言っているのか見てみましょう。


区分所有法50条

1.規約により総会において決議をすべき場合において、組合員全員の承諾があるときは、書面による決議をすることができる。

2.規約により、総会において決議するべきものとされた事項については、組合員全員の書面による合意があったときは、書面による決議があったものとする。

1において、「集会の代わりに、書面だけで決議してもいいですか」という問いに対し、区分所有者全員が「はい、いいですよ」という承諾が事前に必要ということです。場所、日時を指定せずに集会のかわりに書面決議する場合は事前にこのような手続きを踏まなければなりません。

繰り返しますが承諾の条件は、区分所有者の過半数ではなく、全員の承諾が必要ということです。反対者が1人いても、無回答者が1人でもいたら決議はもちろん、決議する場、方法としてダメということになります。

2において決議する事項では承認(否認)は過半数ではなく全員となります。全員が承認に賛成してこそ承認が決議されるということ。これも過半数ではありません。つまり1において全員が「集会をせず書面で決議していいよ」という承諾を得たのち、2で各議案でも全員が承認しなければその議案は承認されないということ。

この条件けっこうハードル高いですよね。この条件をクリアすること自体、先ずムリです。総会でも欠席者はたくさんいますし、議決権行使書の返事がないのは当たり前です。全員の承諾、承認なんてのはほぼありえません。
これは電磁的方法(メールとかwebとか)にも準用されます。例えweb上での総会を企画していても事前に全員の承諾がいるということですから気をつけてくださいね。


議論なき集会は集会にあらず


 こんなに条件が厳しい背景には、物事を決めるには、いろんな意見を聞いたり、話したりして判断の材料を揃えてから決める。つまり集会での論議を重視してのことでしょう。書面の決議では論議できませんから。双方向の意見交換の場にはなりませんよね。
総会は、決めることより、決めるまでの過程、手続きが大切ですということです。
安易に、議論もせず多数決で決めることは民主的じゃないから止めましょうね。ということを区分所有法で言っているのでしょうか。

予防保全を考える


予防保全とは


 長期修繕計画の作成にあたり、大規模修繕の実施時期、給水ポンプ交換時期、エレベーターリニューアルなど修理、交換などのおおまかな時期を周期単位で項目を挙げている。
管理会社が組合に提示する長期修繕計画は、この周期を前提に交換時期や修理時期の説明しているのはご存じのとおりです。

 「この設備は何年も経過して劣化も激しいことでしょうから、何かあっては皆が困るので早め早めに交換しましょう。この予防保全を行うことでトータルコストを下げる事ができます。」

 唐突にこのように言われても合点がいかない。確かにそれなりの劣化は否めないが、故障しているわけではない。たとえ故障していても即交換とはならないだろう。交換する前に修理という視点はないのだろうか。
「修理を何度も行うことは結果としてコストがかさんでしまいます。修理しても古い部品は残りますからたえず故障リスクは残り続けることになります。」
本当か?


予防保全はコストがかかる?

  計画はあくまで計画であり、長期修繕計画にインターバルが15年とあれば何がなんでも15年で交換することもなかろう。15年の周期はあくまでも目安である。使用頻度も設備環境が違えば当然周期も異なるであろう。この周期の数字が一人歩きしている感も否めない。
しかしながらこの周期とて、根拠が全くないわけではないので、周期の数字は数字として承知しておく事も大事である。

点検の結果を根拠をもとに、周期は大幅に延ばす事ができる。
機械はあくまでも機械である。経年劣化は防ぐことができなくとも、経年劣化が故障に即結びつくというものでもあるまい。たとえ見栄えが悪くとも機能的に衰えがなく、効率的な仕事をしていてくれればまだまだ現役ということである。そのための判断材料として定期的な点検結果があるというものだ。

 しかしながら、この点検の結果をちらつかせて「給水ポンプにちょっと異音がでてますね。この際2台まとめて交換しましょう」などと提案してくる。たしかにポンプが故障したらライフラインは止まるのだが、人を恐怖に落とし込もうとする姿勢がミエミエなのだ。この恐怖心をあおる一言に、慣れない理事会はコロリとだまされてしまう。

 自分が理事の期間中に故障でもしてしまったら責任を問われるかも。なんて頭の中が不安でグルグル回ってしまう。
何も2台とも新品一緒に交換しなくとも、1台をオーバーホールして延命を図り、もう1台はしばらく稼働させたのちオーバーホールさせればよい。オーバーホールの先に2台の時期をずらして交換へともっていけばよい。

 そうして来たる交換時期を先延ばしにする事でランニングコストを下げる。
もっとも、オーバーホールが可能であり、交換とオーバーホールのコスト比較とそのランニングコストの検討は判断を仰ぐことになる。


貴方の車を例えるとしよう。

 新車で買って3年目。車検に訪れたディーラーの営業が、「今不具合がなくてもだいぶ走行距離があるので、買い替えをお勧めします。新車を3年ごとに買い替えれば故障の心配もなく、いつも新車の気分が味わえます、今ならいい値で引き取りますよ。」
大きなお世話である。
車なんて今時最低でも10年はしっかりと乗れる代物。3年ごとに新車を買い替えるコストと、車検で10年乗り続けたコストを比べるがよい。
ちなみに私ごとで恐縮だが、愛車ステップワゴンを初年度登録から20年乗り継いだものです。走って、曲がって、止まるのに何の不具合もありませんでした。機械とは従順であります。


点検あっての予防保全


 予防保全を全否定するわけではありません。外装タイルの浮きを見逃し、落下して人を傷つけたというのでは論外です。日頃パールハンマーを打っていれば事故は防げた事でしょう。こういう場合はちゃんと点検結果に基づいた予防保全が推奨されるべきです。
エレベーターのリニューアルも完全リニューアルを目指すのか、部分リニューアルにするのか。
最高セキュリティのシステムを推奨する会社と最低限のシステムを推奨する会社のどちらを選択するのか。原資に限りがあり優先度というものがある以上、どこかで妥協するにしても、小さな修理の積み重ねで稼働時間は大幅に伸びるということを知るべきでしょう。
物理的な故障をほとんど起こさないのがエレベーターです。
故障と言われるものの大半は制御系、つまり制御ソフトとブラックボックス化した制御基板です。
リニューアルを持ち込む理由として、安全装置に係る法改正による最新のシステムの導入、部品供給の廃止、在庫不足による修理、交換が不可となる懸念が理由として挙げられます。
単に20年の経過により判別されるものではなく、点検(無線遠隔ではなく)の結果をもとに判別し、そこから少しでも稼働を長くできるような工夫を考えるべきでしょう。
何が予防保全に相応しいのか。何が事後保全に相応しいのかを検討するのも一考です。

部品供給を例にとっても、ASSY交換しかできないものと、分解した部品単位で交換できるものがあります。ASSY単位の交換であれば本来調子のよい部品も交換させられてしまうことになります。どちらもトータルコストを下げるための判断材料をもっておくといい。

2022年3月11日金曜日

本末転倒 駐輪場使用料設定してガラ空き

 専用使用料設定の目的


荒れる駐輪場

 どこのマンションにも駐輪場は設置していることでしょう。自転車とオートバイなど置き場所を分けている所も少なくありません。
よく、マンションの管理状況を判断する目安としてでてくるのが駐輪場の管理所状況です。
壊れた自転車の放置、幼児用3輪車の保管、空気入れ、鍵チェーン等自己所有物の放置、明らかに住人のものではない自転車、オートバイ用のオイル廃棄缶などまるで倉庫を兼ねているかのようになってしまった荒れた駐輪場が散見されます。

どのマンションも一度はこのような状況に対処するために、定期的に不要自転車の撤去や所有者を明確にするためにタグなどをつけて識別化していることでしょう。
駐輪場がいつも整然としていることは、住民のマナーはもとより、管理面もしっかりしているという目安になります。整列方法もパラレル式の駐輪機を設け、利用細則などを取り決めていますので急激に駐輪場が荒れるということはないでしょう。

平面駐車場が確保できる敷地があるマンションでは、おおむね世帯数の自転車が駐輪できるスペースを設計しています。しかし家族構成の移り変わりにより自転車の保有台数もある時期をピークにして、減少していくのが通例です。やがて自転車を保有する世帯がだんだん少なくなっていき、やがて駐輪場の置く自転車の数は減っていきます。

安易な駐輪場使用料導入

 駐輪場がやがて荒れていくマンションは、利用者にマナーだけに訴える事しかやってこなかった管理組合が多いようです。
これだけでは、効果に限りがあります。マナーを訴えるのも大事ですが、整列させる機器の導入などの検討も必要でしょう。整列させるためのしかけもまた必要でしょう。
やがて、ある理事会は雑然とした駐輪場に業を煮やして「使用料」を取るという安易な方向で解決しようと考えます。

たしかに駐輪場に使用料を設定しているマンションもあります。
このようなマンションは大規模で世帯数の割には敷地面積が狭く、駐輪スペースも初めから少なく限定的な利用者にならざるを得ないという前提があります。そしてこのようなマンションでは規約でその旨が明示されています。
また、駐輪場のキャパを考慮して各世帯1代目は無料とし、2代目から使用料を徴収するというところがあります。

駐輪場は共有部分ですから、エレベーター利用と同じく利用者の頻度ではなく、皆が等しく利用できるという前提があっての付属物です。
当然に駐輪場は利用されるべきものという前提があるのに、使用料を設定して利用者のだけに負担を強いるのはおかしいのではないでしょうか。

理事会は各世帯に台数に関係なく一律に利用する自転車に使用料を徴収する案を総会に上程しました。残念にも漫然とした組合員は、この議案を可決しました。
しかし、雑然とした駐輪場の管理を具体化する検討もしないのに関わらず、安易に使用料を徴収すれば利用者が減るだろういう意図が見えます。

整列させる工夫を提案せず、駐輪場の管理をせずに安易に利用者を管理したにすぎません。
先ずは不要自転車の破棄から始まり、整列させるための機器導入の検討、使用最速の検討など、対処する方法はいくつもありますが、その過程を全部飛ばしてしまうことは理事会の適応力不足、不作為ともいえるのではないでしょうか。

ガラ空きになった駐輪場

 事実このマンションではその後、不要自転車の破棄した後、利用台数が激減して駐輪場がガラガラになってしまいました。
一部の利用者はお金をとられるぐらいならということで専有部分に保管するという人が増えたそうです。
駐輪場を利用したいとする人がいるものの、使用料を払うことに違和感を感じて駐輪場を嫌煙する人も少なくありません。
駐輪場を利用する人はキャパが充分にあるのにかかわらす、使用料を負担する羽目になっています。

せっかくの駐輪場が、使用料を徴収することで、利用者を減らす役目を担ってしまったという本末転倒の結果となってしまいました。
駐輪場の管理をせず、利用者を管理した本末転倒の例です。

正しいより親身であること

どこまで汗をかけるか


入居してから知るトラブル

 マンション住民からみた場合、頼りになる管理会社や理事会とはどのようなものでしょうか。
マンションを購入した人にとって、そのマンション立地、間取り、周辺環境、建物外観、仕様などマンションの建物と専有部分ばかりに目がいってしまうのはしょうがないことでしょう。
住み始めて時間もたてば「こんなはずじゃなかった」とか「こんなトラブルにまきこまれた」とかマンションならではの対隣人生活トラブルというものを経験することも少なくありません。マンションを購入するときはそのような問題など考えていませんでした。

 ご存じのとおりマンションは集合住宅ですから上下階と左右に隣人が住んでいます。
隣人は年代も違えば家族環境も違う。サラリーマンもいれば自営業の方もいる。昼に働いている人々ばかりではありません。夜働いている人も当たり前のようにいます。

生活様式のパターンも違えばその生活に対する様々な価値観も違います。
そんなお隣さん同士ですから、ゴミ出しのルールを守らない、床をドタバタ走ってうるさい、テレビの音がうるさい、ピアノだのギターだの夜中にうるさい、ベランダのタバコの煙が臭いだのとにかく隣人のことが気になるものです。

こんなはずじゃなかった

 気になる程度のものが、やがて苦痛にかわり、クレームとなって住民間のトラブルになってきます。こうなるとせっかく購入したマンションですから、自分が想う理想の生活環境を守ろうと頑張ってしまいます。自分は正しい、受忍限度を超えてる。私は被害者であるから加害者を正さなくてはならないというような軸方向に感情が向かってしまいます。

 みなさんのマンションにもこのような住民は少なからずいることでしょう。
いや、このような人を悪くいうつもりは全くありません。その逆です。
このような方が、ある日クレームとして管理会社や理事会に「なんとかしてください」と相談をもちかけたとしたら、あなたが管理会社の担当者、あるいは組合の理事長であればどうのように対処するでしょうか。

フロントの対応

 あなたが管理会社の担当者として
管理会社担当者Aの場合
 「マンション住民間、個々のトラブルは管理会社としては責任をとることができません。当事者同士で話し合ってください。」
 「いや、どこにでもあるんですよ。こういう問題。おたくだけじゃないんですよ。」
 「理事長さんに言ってください。うちじゃできません。そもそも委託契約外ですから」

 この担当者の返事は管理会社として判を押したような規定型のまっとうな回答です。たしかに委託業務契約に住民間のトラブルに介入するような職務はありません。言葉足らずと言えども、正しい答えといえばたしかにそうのようです。
 悪く言えば、金にならない仕事はしません。クレーマーまがいの電話をかけてくるなという感を出します。

管理会社担当者Bの場合
 「そのようなマンション住民間の個々のは管理会社としては責任をとることができません。しかし、住民間で話し合う場合、お互いの感情論になってしまうので、かえって問題を深くしてしまいます。なので管理組合の問題として提起しましょう。今度の理事会にそのような問題があることを理事会に報告いたします。事前に理事会の了承をとりますので、同席のうえ、そのようなトラブルに遭われた日時、症状など記録として資料をお持ちいただき話をを伺うことにしましょう。理事会と調整します。」

 管理会社が直接手を下して対処する用件ではなくとも、その用件は管理組合が対処するべきことを自然に誘導し、かつその人を理事会に入れて話しを聞く場を持たせることで、その人の顔をたてることができます。担当者は調整役に徹します。答えは出しません。


理事会の対応

 他方、管理会社ではなく、管理組合にこの問題を投げかけたいという場合。
管理組合のポストに相談依頼の文書を投函
理事会Aの場合
 理事A「また、〇〇さんから△△の件でクレームの投函がありました」
 理事B「これで3回目ですよ。ちゃんと話を聞いたほうがいいのではいないでしょうか」
 理事長「いや、彼は変わってますから。また話合ってもきりがないですよ。他の人からクレーマーに近い人だと聞いています」
 理事C「理事会で何度もこの問題をスルーしてますからね。それに対する当てつけかなとも思います」
 理事長「まぁ。今回も静観しましょう。そのうち、またおとなしくなりますよ。」

理事会Bの場合
 理事A「また、〇〇さんから△△の件でクレームの投函がりました」
 理事B「問題を先送りにしたのがまずかったようですね。」
 理事C「住民間のトラブルは管理組合の問題ですから、何かしらの解決策を模索しましょう」
 理事長「再度彼を読んで話を聞きましょう。管理組合の問題ですからね。理事会が第三者的な立場で住民間のトラブルに向き合っていきましょう」
 理事C「当事者の言い分に対し、理事会と一緒に対処案が出せるといいですね。」

どこまで汗をかけるか

やっぱり人間力 
契約あるは法に対し、正しいことだけ、誤っていないことだけを念頭において仕事をすれば、誰にでもそれなりの仕事はできます。でもプロはその周りを埋める仕事を躊躇しません。

正しい、誤りと答えを即答する前に、先ずは親身になることだと思います。答えはその人の人間力の中にあると思います。
おたくのマンションの管理会社、理事会はA?それともB?
管理会社、理事会がともにAの場合、先ずはお住まいのマンション管理士会にご相談してみてはどうでしょうか。

修繕積立金の余剰金分配はOK?

修繕積立金はどこに帰属するか


修繕積立金余剰金の分配提案

 とあるマンション組合員から相談がありました。
「理事会が修繕積立金は貯めすぎなので現区分所有者に分配したい」という議案を総会に出す予定だが、そもそも修繕積立金を分配することはできるますか?」という内容です。

修繕積立金の用途については標準管理規約28条
 1.一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
 2.不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
 3.敷地及び共用部分等の変更
 4.建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査
 5.その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のためのに特別に必要となる管理とあります。この条文からは分配できるとは書いていません。実際どうなのでしょうか。

裁判にもなった事例

 知ってか知らずか、この条文を無視して総会に上程し、可決した管理組合がありました。この管理組合の規約には28条の条文があり、規約の変更はありません。
一部の組合員が28条に違反する旨を主張して平成23年東京地裁に訴訟を起こしました。

判決
1.議事録内容の瑕疵を認めるとともに、減額する意図であっても28条の取崩しの要件には該当せず、平等に返還する旨の主張は採用できない。
2.修繕積立金の使途は、マンションの修繕等に限定することである。みだりに修繕積立金から散逸することをできない。
という判決により分配を無効としました。

ある理事の発案で、返金という耳障りのよい話を住民にもちかけて、管理組合の財産を取り崩すしてしまったという悲しい事実です。

修繕積立金は修繕に用するお金です。修繕計画に沿った積立金の運用が図るために積立られるべきのものです。理事の一案で取崩しができるものではありません。
修繕積立金を散財したことで、管理組合の将来的な財政は楽観できないものとなってしまいました。
理事の見識の甘さが組合員を道ずれにした例です。

標準管理規約28条

 本当に計画のとおりに運用がしっかりされたうえで、剰余金で配分が可能となった場合、そしてそのお金を分配してさしつかえのないと判断するのであれば、先ずは28条の規約を改正して、余剰金を分配することができるという規約が新たに必要です。

この規約の変更なしでは修繕積立金の分配は規約に違反するものであり無効です。
新任した理事、理事長はどうも目に見える成果というものを欲し、誇示したがるものです。しかしそのおかげで組合員の大切な財産に穴をあけた。となっては責任問題を追及されてしかるべきでしょう。
組合員の決議があろうがその責任は理事会にあるというものです。
組合員は詳しいことを知りません。理事会の言うことを信用せざるを得ません。
そこに付け込んでミスリードを先導した理事会の過ちは大きいといえます。
こんなことがないように組合員も管理規約の周知を図り、理事会含めての運用面の適正化が図られます。

2022年2月12日土曜日

マンションのコミュニティ

 つながり合う


無関心の集合体

 マンションは鍵一つで安心なセキュリティと共に、プライバシーに侵されることなく自由な生活空間が確保できるとデベロッパーなど売主を中心にその利点が語られる。たしかにそのような利点はありつつも、多種多様な価値観を持った人が隣り合いながら住んでいる集合体であることにはかわりなく、互いに干渉しない暗黙な生活ルールが存在してこそ平穏さを保つ事ができる。
ホテルライクな生活を求めてマンションに住む人、ファミリーで子育てに追われマンション住む人、ゆったりとした老後の暮らしを求めてマンションに住む人、年代層だけでは語られない様々な人々の暮らしがある。マンションの下に一緒に暮らすことに、求める価値もそれぞれだが、互いに強い連帯感をいだくほどの横の関係構築には関心が向かわないのが実情だろう。

無関心の仮面

 隣り合う近所との適度な距離感に身を置くことで、マンションという集合体に自分の立ち位置を隠し、生活の場の平穏と安定を保っているといっていい。互いにその平穏さを脅かされることには敏感である反面、平穏を保つための暗黙のルールだけでは多種多様な価値観の前では用をなさないジレンマも経験していることだろう。そしてこのジレンマから派生する様々な問題が起きることも認識していると思う。マンションに住む人も互いに仲良くなりたいと思っているだろうが深入りはしたくない。めんどうな関係にはお互いなりたくないのが正直なところ。そこに共同住宅に住むからこその無関心を装うという暗黙のルールができあがる。
でも本質は、ただ無関心の仮面を被っているにすぎないのではないか。無関心を装う顔の向こうに「コミュニティが大切だよね」と言っている顔が見えるようにも思える。

マンションのコミュニティって何

 このマンションの多様な住民の暮らしを円滑にするための対象としてコミュニティ(共同体)ということがよく話題になる。確かにマンションはひとつの共同体であるからそこに良好なコミュニティが存在すれば何か暮らしにおいてプラスの作用がうまれるのではないかということである。暮らしにおいて平穏、安心と安全は担保しておきたいが、この担保は監視カメラや管理員だけで守られるものではなく、住人が住人を介して住人に働きかけるしくみが必要と感じていることは肌感覚と認識しているだろう。
良好なマンションの共同体(コミュニティ)とは何かという話になると、大雑把で曖昧な話に終始していしまうことがある。

親睦はコミュニティの本質か

 例えばコミュニティの形成は先ずコミュケーションから始まるという視点から、触れ合い、交流する場を企画。とりわけお祭り、催事に参加、交流することにより親睦を互いに深め合うことがコミュニティ形成の目的だという。そのため子供は祭り行事に駆り出され、大人は祭り行事を仕切り地域を巻き込んでのイベントとなる。たしかに参加した人達の交流によって親睦を深めることになるが、参加しない、あるいはできない人達には何が残るのだろうか。参加した者のみが享受し、参加しない者は享受しないという親睦はそもそもマンションのコミュニティの本質だろうか。同じように趣味を共有しあう仲間が集会室を借りて発表会などの催しを企画するようなサークル系である。趣味をとおして仲間を広げることにより親睦を深め合うのは当事者同士には有意義な事だろうが、その趣味をとおした仲間が、仲間以外のマンション住民に対してコミュニティをどのように構築していくのだろうか。

祭りも催事も共通するのは「仲間づくり」である。マンションは多種多様な人が住む運命共同体である。趣味があろうがなかろうが、祭りに参加しようがしまいが、仲間だろうがなかろうが、ただこのマンションに住んでいるだけで結ばれている。だからこのマンションに住む住人すべてが享受し合う意識を根付かせる活動が求められるのではないだろうか。
親睦は確かに共同体(コミュニティ)を形成する一つの手段であるが目的ではないはずである。祭りや催事で親睦を深めた先にマンションのコミュニティとして何を目指すのだろうか。

なにも親睦を否定するわけではない。親睦自体がその目的であったとしても、その目的をもってさらにコミュニティ形成につながるきっかけであってほしいと思う。
そして、親睦の先にあるコミュニティの景色を描くことが出来なければ、コミュニティを
形成しているとは言えないのではないだろうか。

管理規約とコミュニティ活動

標準管理規約27条に管理費の使途項目からコミュニティ条項が削除された。

従来は「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成(に要する費用)」という項目が掲げられていたが、昨今のコミュニティ活動が本来のマンション管理に資するものどうかという疑念に応え、コミュニティ条項を削除するという形で改正されたことに注目している。
このことから、コミュニティ活動を管理費から支出しようとした場合、自分のマンション管理規約がこの条項に合致しているかどうかの判断が求められる。
後々のトラブルを避けるため、町内会費同様、このようなコミュニティ活動をする場合、マンション内で任意加入の緩やかな自治会を組織して会費を募る方が望ましいのではないだろうか。標準管理規約でいうコミュニティ活動とは清掃、景観形成、防災・防犯、生活ルールなど資産価値の向上を挙げている。あくまでも区分所有法でいう管理の範囲内の活動としている。

標準管理規約27条コメント(全文)
 従来、本条第十号に掲げる管理費の使途及び第32条の管理組合の業務として、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成(に要する費用)」が掲げられていた。これは、日常的なトラブルの未然 防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するコミュニティ形成について、マンションの管理という管理組合の目的の範囲内で行われることを前提に規定していたものである。しかしながら、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」との表現には、定義のあいまいさから拡大解釈の懸念があり、とりわけ、管理組合と自治会、町内会等とを混同することにより、自治会費を管理費として一体で徴収し自治会費を払っている事例や、自治会的な活動への管理費の支出をめぐる意見対立やトラブル等が生じている実態もあった。一方、管理組合による従来の活動の中でいわゆるコミュニティ活動と称して行われていたもののうち、例えば、マンションやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活動、生活ルールの調整等で、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動は、それが区分所有法第3条に定める管理組合の目的である「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」の範囲内で行われる限りにおいて可能である

マンション住民の相互扶助

 コミュニティの定義自体が様々だ。様々なのは問題ではないが、様々にとれる解釈が曖昧さを生み、あれもこれもコミュニティだと言わんばかりとなり、本質を見間違うことを恐れがある。例えば地域コミュニティという定義だけでもまちまちで、地域コミュニティの定義を示している自治体は少ない。その中である自治体の地域政策課は定義の解釈の多様を認め、その中でコミュニティの求められる機能のひとつとして「地域問題解決機能」を挙げている。
 
地域問題解決機能
「地域住民のニーズを反映した、住みよい安心・安全な地域社会を実現するため、個人や家庭、地域が直面する課題について地域住民自らが発見・把握・共有し、相互に協力して解決する機能」具体例として「住民相互の扶助」

マンションはその地域にある「村」でもある。地域をマンションという言葉に置き換えるとマンションのコミュニティの目的が何となく見えてくる。そしてマンション住民の相互扶助という具体例も見えてくるのではないだろうか。つまりマンションの住民がマンションの住民を助け合うという、いたって当たり前のように見えるが普遍的なコミュニティの姿だ。ただ、それをマンションという場で見える形として残し、意識として住民に根付かせるしくみを構築するのは言うほど簡単ではない。

つながっている安心
コミュニティのセーフティネット


 マンションをとりまく負の環境は深刻さを増すばかりだ。マンションに人が住み続けて約50年。国交省調「2018年度マンション総合調査」では世帯主の年齢の約半数は60代以上と報告している。今後さらに高齢化が進むことは容易に想像できる。この高齢化の波は、管理組合の役員なりて不足を生じ、管理不全に陥る主な原因となりかねない。同時にマンション内の世代交流も薄れていくことだろう。マンションには様々な営みがある。マンションに暮らす独居老人、マンションに移り住んだ老夫妻、子育てに奮闘する若いお母さん、年金生活者、重い障害を抱えて暮らす親子、親の介護に汗を流す息子夫婦、引きこもっている青年、日常の買い物にも不自由しているお婆さんなどなど多種多様の営みがある。

これらの人々の姿はやがて来る自分の姿でもある。だれもがやがて老いを感じ、気づけば隣近所誰もが老人という時がくるかもしれない。若い頃は助ける立場であったのも知らぬ間に助けられる立場になっていることもそうは遠くないはずだ。助けたり助けられたりした事を思い出すとき、そこにあったものは「おたがいさま」の相互扶助の精神ではなかっただろうか。

お互いが助けたり、助け合ったりすることが当たり前であった時、助けを求めれば応えてくれるという安心感、助けを求められれば皆で助け合うという暗黙の関係。あるいはこのマンションの住民でよかったと思えること、自分はマンションの住民とつながっていると実感できることがマンションのコミュニティの根幹ではないだろうか。それはマンションコミュニティのセーフティネットでもある。マンションとマンション住民からなる相互扶助による「きずな」によって皆がつながり合っていることが実感できる。このことがコミュニティを支える本質のように思える。

声かけと見守り

 では、このマンション住民を互いに支え合うしくみ、きずなが実感できる施策とはどのようなものがあるだろうか。相互扶助とそれを支える世代間交流がテーマとなろう。
・買い物に行けないお婆さんに声をかけ一緒にお買い物を誘う
・ひきこもりの世話をしているお母さんに声をかける
・子育てに悩む若いお母さんに相談相手として声をかける
・高齢の老夫婦に困りごとがないか声をかける
・住民間のトラブルに悩む人に声をかける 
・住民に声をかけ、マンション廻りを掃除する(草取り、掃除)
・マンション周辺の防犯見回り
子供、高齢者の見守り

ここに祭りや催事の後に経験する高揚感はない。淡々とした声かけと見守りだけである。

きずなを感じ合う

先ずは声かけから住民を知る、知ってもらうことから始める。そしてこの声かけを実践的に行えることを住民共通の決まり事として認識するところからコミュニティを形成する第一歩としたい。マンション住民の相互扶助を機能的に行えるしくみを有志達が集まって話し合うのもいい。その中で「この指とまれ」の有志同士で緩やかな自治会を組織してもいい。試行錯誤であってもいい。できる範囲とできない範囲をきめればいい。そしてガンバリすぎないこと。
自分のマンションに考えられる相互扶助の形をイメージしながら、マンション住民の高齢化に伴う支援、子育てに悩むお母さんの支援、子供への見守り支援、「見守りと声かけ」を持続的に行える事ができるマンションの住民はきっとマンションに守られていると感じることができるのではないだろうか。マンション内で解決できるものとできないものは当然でてくるが、行政からの支援、地域からのからの支援、相談がスムーズに行えるような組織まで意識を高めることが必要となる。各マンションにより、濃淡の差はいろいろあるが、親睦を超えて、皆が関わり(きずな)を持って暮らしているという実感。これがマンションのコミュニティのひとつの形であり、コミュニティのセーフティネットでもあるような気がする。


2022年2月4日金曜日

集会所の有効利用

 集会室の有効利用

 一般的に中規模程度のマンションあるいは団地型のマンションでは、総会、理事会など区分所有者が一同に集まれる集会施設があります。
大規模なマンションでは組合員も多いことから、収容人数のキャパも大きいことでしょう。マンション構造により異なりますが、単棟型のマンションのように建物内に併設しているところもあれば、団地型マンションのように別棟の付属建物として建てられてところもあるでしょう。これだけの空間がありながら、年に1回総会や理事会だけにしか利用していないなんてもったいないと感じるのは住民だけではないはずです。集会所は共用部分であり、住民が等しく利用できる空間で有効利用してこそ活きるものです。規約に集会所の利用制限をかけるのを改め、住民のニーズに応えられるよういろいろなしくみがあっていいのではないでしょうか。

ゆるい空間を創る

 例えば、子育て家族が多いマンションな場合、用済みとなった絵本、児童本などを持ち寄り、小さな図書室にして子供に本に触れる機会を与えると同時に、お母さんたちの子育てのコミュニケーションの場として活用することが考えられることでしょう。
背の低い本棚とその周りに机と椅子を配置すれば、立派な図書室に改修することができます。
本を媒介して子供にいろいろなしかけを考えるのも楽しいのではないでしょうか。
子供を通して、お母さんたちも知り合うことができお互いをよく理解する機会がうまれることになるでしょう。世話好きのお母さんに図書室の運営を任せてもいいかもしれません。

目的は日常のコミュニティ形成

 あるいは、高齢者の拠り所として利用する場も考えられます。
外出する機会もなく、住居に閉じこもりがちになっている高齢者にも集会所にきて楽しむという動機付けがあれば、ふだんの生活に張り合いができるというものです。
例えば、将棋、囲碁などが楽しみながら利用できる公民館のような空間です。お年寄りがぶらっと来て碁にふれているところにぶらっときたお年寄りが仲間に入るという関係。地方の公民館の一室にあるようなゆるい空気感がある空間のイメージです。
誰かに声をかけるわけでなく、ある時間になると高齢者たちが自然と集まるような空間は、ある意味高齢者たちだけのコミュニティを形成しているのかも知れません。
ここから世代間交流を軸に展開していけばコミュニティの本質に近づけるかもわかりません。

日常生活の延長

 なるべく費用をかけることなく、簡素を基本にゆるやかな継続的な運営を図ることができないでしょうか。
イベント的に利用するのではなく、利用者目線で日常の生活の延長にあるようなしかけを探してもいいのではないでしょうか。せっかくの集会所です。有効利用するしかけを組合員からアイデアを募るのも楽しいと思います。
もちろん利用に関する細則などを決めて事故に注意して、安全を考慮したものにしたいです。
皆がいろいろな案を出して合い、ワークショップのように集会所の有効利用を考える専門部会を立ち上げるのも楽しいかもしれません。


☆自己紹介☆

自己紹介 こんにちは! 加藤典保といいます。 岡山県マンション管理士会で副会長やってます! マンション居住歴30余年でもあります。 マンション管理士と名乗ってもマンションに住んだことがないマンション管理士とは一線を画します(笑) あなたのマンションについてのお悩みや相談など困りご...