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2021年12月30日木曜日

統計からみる岡山(中・四国)のマンション【規約編】

 都会のマンション、中国・四国のマンション


【規約編】


 今回は管理規約について統計をみていきます。
すでにお話したとおり、2018年度マンション総合調査(国交省)からの統計を基にしています。

1.管理規約の有無  (上段:回答数 下段:%)
合計あるない不明
中国・四国
21821233
10097.21.41.4
東京圏
36235912
10099.20.30.6
京阪神圏
222221-1
10099.5-0.5
管理規約がないと回答する管理組合ってどうなの


2.管理規約の改正の有無  (上段:回答数 下段:%)
合計あるない不明
中国・四国
212185225
10087.310.42.4
東京圏
359331262
10092.27.20.6
京阪神圏
22119022110
100869.54.5
管理規約は改定を積み重ねてなんぼのもの。原始規約のままはありえない


3.管理規約の最終改正年 (上段:回答数 下段:%)
合計~平成元年~平成6年~平成11年~平成16年~平成21年~平成26年平成27年以降不明
中国・四国
1851---3116812
1000.5---1.60.590.86.5
東京圏
331-11471827327
100-0.30.31.22.15.482.58.2
京阪神圏
190-1-15516513
100-0.5-0.5.2.62.686.86.8
民泊、反社に関する問題が規約改正を加速さたのでしょうか


今回は規約に関しての調査でした。あまり都市圏との顕著な差というものは感じられませんでした。次回は「管理費」についての調査の予定です。

2021年12月29日水曜日

岡山で初めてのマンション

1970年10月 岡山初のマンションが誕生

万国博覧会

 1964年(昭和39年)東京オリンピックが開催され、日本中が高度経済成長に湧き、所得倍増計画で誰しもが中流階級として安定的な生活を享受し始めて6年後、1970年(昭和45年)に大阪万博が開催されました。日本各地に大規模な公営団地が立ち並び、民間の分譲マンションの黎明期のころです。マンションストック数も右肩あがりを続けて全国でその数は約94.3万戸となっていました。その年に岡山県ではじめてのマンションが誕生しました。今から51年前のことです。

NK内山下コータース

NK内山下コータース
 岡山市北区内山下に岡山初のマンションが完成しました。その名は「NK内山下コータース」
コータースとは現在では福住の家造りの総称とされますが、QUARTERSの本来の由来は、中世ヨーロッパの上流階級の格式高い住まいの象徴がその語源となっているようです。まだマンションということばが一般的ではなかったこの頃、時にこのような独特な呼称が与えられたことに、この建物に対する強い想いが伝わります。NKは何の略でしょうか。
650㎡の敷地面積に7階建て、RC造り、31戸、40~60㎡の2LDKの専有面積を有します。分譲価格は550万円~900万円、平均面積と平均価格は48.45㎡と600万円。坪単価30万円。最多価格帯は800万円の物件でした。
1階を赤レンガ風、2階以降を白を基調としたこのマンションは現在でも存在しており、外観を見る限りとても半世紀前の建物とは思えないほど整然としています。現在でも。不動産情報などで、その詳細を知ることが出来ます。
その後、1972年に地元の不動産会社角南が4階建てRC造り32戸「角南豊成フォートレス」を分譲したことにより、岡山にマンションの波が到来していくことになります。

マンション開発の波からオイルショックへ
 1973年(昭和48年)3月には地元の不動産会社三長商事が岡山市北区に「いわいサンコーポ」を分譲。7階建てRCで189戸を分譲、初の大規模なマンションとして登場。続く8月には中区に「メゾン操山」が分譲を開始しました。7階建てRCで91戸、特に平均専有面積は70㎡を超えるなどファミリー向けの大型マンションとして注目されました。この時期は岡山にとってはマンションの黎明期だったのでしょう。
1970年に始まったマンション建設の波は、その後1972年に1棟、1973年に8棟、1974年に9棟とその数を順調に重ねましたたが、1973年から始まった第1次オイルショックにより市場は低迷。その後は1975年に1棟、1976年には3棟にとどまりました。

倉敷富井フォートレス
倉敷市初のマンション

 では、倉敷市で初めてのマンションはどうでしょうか。
1973年7月に「倉敷富井フォートレス」が分譲を開始。6階建てRC、水島臨海鉄道に沿うように建てられ、赤い屋根が特徴です。敷地面積1454㎡、専有面積32.9㎡~53.2㎡(2DK~)で64戸、坪単価34万円、分譲価格295万円~595万円で最多価格帯は400万円台で分譲されました。
このマンションが倉敷市ではじめてのマンションといわれています。



このブログは下記の文献を参考にしました。
 混迷する中古マンション流通市場
 麻賀又彦著
 大学教育出版

2021年12月28日火曜日

スケルトンインフィル(SI) 倉敷市中庄団地第2期

 

倉敷市営中庄団地のSI住宅


倉敷市営中庄住宅


スケルトンインフィル(SI)とは

 建築の話をしよう。でも私は建築家ではありません。
スケルトンとは骨格、インフィルはフィルインから名詞形となりインフィルと称し、主に内装と訳される。構造物の骨格(共用部)とレイアウトの自由を許す内装(専有部)とを分けて設計された住宅。とりわけ長寿命を可能にする構造素材とライフスタイルの変容に合わせた間取りの自由度がこのSI住宅のメリットと言われる。

共用部である構造物はとりわけメンテナンスが容易になるように設計される。
既存の一部のマンションでは床下スラブを貫通して排水管が走ることがある、そこで管が破水すれば階下の住居の天井に水がたまることになり、やがて天井から水漏れとなって事故となる。階下住民の天井をはがさねければ排水管の修繕工事を行うことができない。残念ながら、加害者と被害者の図式ができあがってしまう。このようなことはお互いの住民、とりわけ管理組合に多大な不安と負担を強いることになる。

SIにすると

 スケルトンで設計すると床スラブの上に空間をつくりその上に床をはることになる。いわゆる2重床で、この空間に勾配をつけて排水管を廻すことになる。万が一破水しても床下スラブ上に貯まるだけで階下には漏れない。住民も床下を見ることが出来るので、配管の状況とメンテナンスが容易にできるので不安はない。このことは室内レイアウトを自由に変更することを意味する。床下空間のおかげで、給排水管の配管周りは自由に配策することで、台所、風呂場、トイレの位置を自由に変えることができる。既存のマンションではフロア全体が2重床ではないため、このような自由なレイアウトは作れない。
同じように天井も2重天井となる。換気ダクトなどを自由に配策することができる。ベランダにエアコンの室外機を配置きさえすれば、天井裏にダクトを各部屋まで自由に配置することができる。

SDGs指向のSI

 全フロアが2重床と2重天井で設計されれば階高は必然と高くなり最低でも3.5m以上は必要になるのではないかと思う。そして間取りを自由なレイアウトを可能にするために耐力壁を不要とするだけの耐震設計にしなければならない。給排水立管及び電気、ガス本管やメーターなどインフラ設備は共用部分に集中させ、専有部分と分離させる。
昨今SDGsの気運から持続可能な集合住宅とは何かと考えるとスケルトンインフィル指向の住宅は合致しているように思える。

SI集合住宅、先駆けは倉敷市にあり

 というわけで、素人が恐れずも建築の話をしましたが、テーマのお題にもあるように、このスケルトンインフィルのポリシーで設計されたのではないかという住宅が岡山県にもありました。公営住宅が先駆けてSI住宅を手掛けています。
岡山県倉敷市中庄にある倉敷市営団地がそうです。県営と市営が入り混じる団地で県営住宅は平成6年度建築文化賞を受賞しています。
第2期工事からはじまった市営団地群にその設計自由度が与えられ、SIを意識した住宅造りが関係者の間では好評のようです。
 2重床や2重天井ではなく完全なSI住宅とはいえませんが、配管は露出配管を基本とし、住戸のプランや設備改修の容易さを重視した設計となっています。特異なのは、2戸を隔てるコンクリートの壁を1.8メートル分だけコンクリートを抜いているという設計になっています。これは将来2世帯住宅など2戸を合わせて1戸に改修できることを意図するなど、間取りプランを柔軟に変更できることを意味しています。興味ある方は一度見てみることお勧めします。棟をつなぐブリッジのデザインに一般の市営住宅とは違った印象ををもたれることでしょう。

SIマンション分譲 例えば

 今後もし、あるデベロッパーがこのようなマンションを売ることは可能だろうか。
例えば建物(共用部)をつくり、専有部分は床も天井もなくむき出しのコンクリートのみの状態で売る。それを不動産屋が一括購入する。不動産屋は専有部分のレイアウトパターンを数種類用意して、客の要望する間取りに合わせて施工分譲する。どうだろうか。たぶん分譲価格は高くなりそうですね。でもこんなマンションもあってもいいのでは。

グレースタワーⅢ

 両備ホールディングが2018年末、岡山市柳川の交差点のシンボルマークとして分譲したグレースタワーⅢもこのスケルトンインフィルの設計が取り入れられているようです。
さすがに前述のようにむき出しコンクリートのままで、間取りを完全オプション扱いにして売り出すなんてことはしていませんが、定型の間取りを分譲としながらも2重床、2重天井の採用でリノベーションによる自由なレイアウトを可能にしています。
将来のライフスタイルの変容に合わせた間取りが可能ということは定住型のマンションに相応しい設計と思います。
グレースタワーⅢ スケルトンインフィル


なお、スケルトンインフィルの集合住宅として倉敷市営中庄団地の詳細を紹介する本がありました。
「建築設計資料」建築資料研究所








2021年12月27日月曜日

統計からみる岡山(中四国)のマンション【役員・理事会編】

 

都会のマンション、中国・四国のマンション


今回は役員、理事会についてみていきたいと思います。
役員の選任人数、役員報酬について、理事会は、開催状況、議事録、専門委員会の設置状況を見ていきます。


役員編】

 役員報酬に関する統計は中国・四国では都市圏では違いが見えます。役員の責任と負担の意識、役員の成りて不足等が考えられます。

1.役員の選任 (上段:回答数 下段:%)

合計
選任している
選任していない
不明
1人2~3人4~5人6~7人8~9人10~15人16~20人21~25人26~30人31人以上不明
中・四国
218218465912810131---6--
100991.89.841.712.84.660.5---2.8--
東京圏
3623587759153395922242422
10098.91.920.725.114.610.816.36.10.61.10.61.10.60.6
京阪神圏
22222084866321738322-42-
10099.13.621.629.714.47.717.11.40.90.9-1.80.9-
マンションの規模、単棟型、団地型で選任人数もちがってくるが、概ね居住者10~15人に1人というところだろう

2.役員報酬の有無 (上段:回答数 下段:%)

合計役員に支払っている理事長のみにしはらっている支払っていないその他不明
中国・四国
21815219524
1006.90.989.40.91.8
東京圏
35899124792
10027.70.3692.50.6
京阪神圏
22017217821
10016.50.980.90.90.5
中・四国は支払わないが圧倒的多数、対して都市圏では支払う比率が高い
ちなみに報酬額は千円(理事)から5千円(理事長)までの範囲が多いようですが、役員一律というところもあります。役員の成り手深刻化する都市圏では報酬を支払っている割合は多い


【理事会編】

中国・四国の理事会開催状況に違いが見えます。3カ月に1回とは管理会社にどっぷりとお任せの追認の理事会でしかないようにも見えます。外部専門家の活用割合も都市圏との違いがみられました。

1.理事会の開催状況  (上段:回答数 下段:%)
合計
1回/月
1回/2カ月
1回/3カ月
1回/半年
1回/年
ほとんど開催していない
開催したことがない
不明
中国・四国
2183249972951-5
10014.722.544.513.32.30.5-2.3
東京圏
3582207145117112
10061.519.812.63.12.30.30.30.6
京阪神圏
2201214932762-3
1005522.314.53.22.70.9-1.4

都市圏が1回/月に対して、中国・四国は1回/3カ月という結果です。これは少々驚き

2.専門委員会の設置の有無 (上段:回答数 下段:%)
合計設置している設置していいない不明
中国・四国
218411698
10018.877.53.7
東京圏
3621452134
10040.158.81.1
京阪神圏
222621573
10027.970.71.4
都市圏ほど専門委員会の設置比率は高いようです


3.設置している専門委員会の種類(重複回答) (上段:回答数 下段:%)
専門委員会設置の合計
大規模修繕や長期修繕計画に関する委員会
規約・細則の制定や見直しに関する委員会
修繕積立金の運用に関する委員会
防災に関する委員会
コミュニティ形成に関する委員会
建替えおよび建替えの検討に関する委員会
その他
不明
中国・四国
41376373131
-90.214.67.317.17.32.47.32.4
東京圏
1451273416422311301
-87.623.4112915.97.620.70.7
京阪神圏
625157114161
-82.38.111.617.76.51.69.71.6
大規模修繕、長期修繕計画の専門委員会設置が圧倒的に多い


4.大規模災害への対応状況(重複回答)(上段:回答数 下段:%)
合計
災害時の対応マニュアルを作成
定期的に防災訓練を実施
防災用品や衣料品・医薬品を備蓄
生活用水の供給体制を確保
非常食や飲料水を備蓄
災害時の避難場所を周知
自主防災組織を組織
防災・災害対応に関する情報を収集、周知
防災用名簿を作成
その他
特に何もしていない
不明
中国・四国
218278428714393426875917
--123912.836.417.915.611.93.7327.17.8
東京圏
362115200123468915291844415646
-31.855.23412.724.64225.123.212.24.117.71.7
京阪神圏
22238106488206335341395611
-17.147.721.63.6928.415.815.35.94.125.25
中国・四国はいずれも半数近くを示す項目がない


5.防犯対策の実施状況(重複回答) 上段:回答数 下段:%)
合計
防犯カメラを新たに設置した
玄関ドアの鍵の交換をした
最寄りの交番、警察署の連絡先等を組合員に周知
防犯マニュアル等防犯に関する情報の収集、周知
定期的な防犯パトロールの実施
防犯診断を実施
警察や専門家に相談した
遠隔監視システムの設置
その他
特に何もしいていない
不明
中国・四国
2181231816952434134214
--55.48.37.34.12.30.91.815.6619.36.4
東京圏
3622145739394612263166015
-59.115.710.810.812.70.36.117.44.416.64.1
京阪神圏
22212628271415164311449
-56.812.612.26.36.80.52.719.4519.81.1
玄関ドアの鍵交換が都市圏には多くみられる


6.外部専門家の活用状況(重複回答) (上段:回答数 下段:%)
合計弁護士建築士マンション管理士公認会計士税理士司法書士管理業務主任者その他活用したことがない不明
中国・四国
21816271213628514611
--7.3125.50.51.42.812.82.3675
東京圏
3627868689221138151774
-21.518.818.82.56.1310.54.148.91.1
京阪神圏
2223733352863381246
-16.714.915.80.93.62.714.93.655.92.7
中国・四国では都市圏に比べて、まだマンション管理士の知名度の低さもあり、専門家の活用度合は低い。活用したことがないが過半数を超える


7.マンション管理士の活用方法 (上段:回答数 下段:%)
合計管理組合の顧問管理者理事必要に応じて個々に相談その他活用することは考えていない不明
中国・四国
218165-8377235
1007.32.3-38.133316.1
東京圏
3624133164910933
10011.30.80.845.32.530.19.1
京阪神圏
22226318358420
10011.71.40.537.42.337.89
現状はこんなものでしょう

次回は管理規約編の予定です。

岡山市マンション管理実態調査

 マンション長寿化施策 マンション管理の行方が都市計画を左右させることは容易に想像できる。 マンション化率が30%を超える東京都心であれば、マンション施策は都市計画に直結する。 都心に限らず、中核都市、政令指定都市、自らマンション施策を発信している地方都市も少なくない。大なり小な...