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2021年12月20日月曜日

月額の修繕積立金の計算方法

修繕積立金と長期修繕計画 

先ずは長期修繕計画から

 相談内容で決まって出てくる話に「修繕積立金」の話があります。

「修繕積立金はいくらあればいいいのか」
「修繕積立金は月額いくらぐらいが適当なのか」
「今の修繕積立金は高いのか安いのか」
「修繕積立金が不足しているから心配だ」 等々

相談者が長期修繕計画を持参されない場合は、答えようがなく、一般的な統計値をお話すしかありません。「140円以上/㎡・月はほしいですね。」とか「大規模修繕工事には約100万円/戸ぐらい必要ですね。」などで言葉を濁してしまいます。

しかし、その答えは相談されなくとも、ご自身のマンションの「長期修繕計画」を見れば簡単な計算でわかります。積立金のグラフか表に「推定累計修繕工事費」の金額が記載してあれば、月当たり必要修繕積立金額を導くことができるでしょう。もっとも推定累計工事費の内訳となる各推定修繕工事費の金額はそれなりの根拠が妥当であることが条件です。

推定累計修繕工事費額

この根拠が曖昧で各推定工事費がおおまか過ぎると金額はどんどん膨らみ、結果として多額な推定累計工事費となってしまいます。また工事実施時期と内容についても精査が必要となるでしょう。修繕、交換する時期の目安と、本当に修繕、交換する時期というものは様々に異なる状況下である各マンションでは画一とは言い難いのが現状です。修繕、交換する時期は必ずしも目安の時期にとらわれず、必要な点検をもとに判断されることが求められます。

長期修繕計画はそのような要因を含めながら、あくまでも将来に向けた資金計画書であり目安であること。そしてその計画はこの先の工事費の単価上昇と人件費の上昇を考慮していない計画となっているのが一般的であるので、今後、経済的、社会的な変動要因を盛り込んだ定期的な見直しが必至となります。

先ずはじっくりとご自身のマンション長期修繕計画とにらめっこしてください。そしてこの推定累計工事費を減らす工夫を私どもと一緒に考えましょう。この金額を下げることができれば支払う修繕積立金も下げることができるでしょう。
でも本当に必要なのは、修繕積立金を下げるのが目標ではなく、適正な金額かどうかを検証することでしょう。

修繕積立金ガイドラインの改定(2021)

 2021年、マンションの修繕積立金に関するガイドラインが改定されました。10年ぶりの改定です。
全国366のマンション(岡山県も数件入ってます)をサンプル調査した結果をもとにガイドラインが策定されています。(国交省)
修繕積立金の目安となる金額に変更がありました。新旧のガイドラインの算出式の違いにより修繕積立金額
(〇〇円/㎡・月)がどのくらい違ってくるのか見てみましょう。

旧ガイドラインの算出法(2011~2020)

<筑30年までのマンションを対象>

 旧ガイドラインではマンションの規模(階数、総床面積)基準として算出していました。
その基準は全国のマンションの統計からはじきだされた金額です。必要とする修繕積立金の平均値および目安は次のとおりです。

算出式 Y=AX(+B)
 Y:購入予定のマンションの修繕積立金の額の目安
 A:専有床面積当たりの修繕積立金の額(下表)
 X:購入予定のマンションの専有床面積(㎡)
( B:機械式駐車場がある場合の加算額 )

15階未満のマンション
 延床面積
 ・5,000㎡未満は、平均218円/㎡・月、目安165~250円/㎡・月
 ・5,000~10,000㎡未満は、平均202円/㎡・月、目安140~265円/㎡・月
 ・10,000㎡以上は、平均178円/㎡・月、目安135円~220円/㎡・月
20階以上のマンションは、平均206円/㎡・月、目安170~245円/㎡・月

 


新ガイドラインの算出法(2021~)

<築年数関係なく既存マンションを対象>

 新ガイドラインでは算出式が次のように異なります。

算出式 Z=(A+B+C)÷X÷Y

A:計画期間当初における修繕積立金の残高(円)
B:計画期間全体で集める修繕積立金の総額(円)
C:計画期間全体における専用使用料等からの繰入額の総額(円)
X:マンションの総専有床面積(㎡)
Y:長期修繕計画の計画期間(ヶ月)
Z:計画期間全体における修繕積立金の平均額(円/㎡・月)

20階未満のマンション
 延床面積
 ・5,000㎡未満は、平均335円/㎡・月、目安230~430円/㎡・月
 ・5,000~10,000㎡未満は、平均252円/㎡・月、目安170~320円/㎡・月
 ・10,000~20,000㎡未満は、平均271円/㎡・月、目安200~330円/㎡・月
 ・20,000㎡以上は、平均255円/㎡・月、目安190円~325円/㎡・月
20階以上のマンションは、平均338円/㎡・月、目安240~410円/㎡・月



新ガイドラインでは算出式の違いにより、旧ガイドラインより大幅に金額が上がってしまいました。
目安とはいえ、この目安の範囲におさまるマンションは果たしてどのくらいあるでしょうか。
大方のマンションではこの目安の下限付近にも及ばないのではないでしょうか。
ここでは割愛しましたが、機械式駐車場の修繕費を加算していません。機械式駐車場修繕費が修繕積立金に計上しているのであれば、別途加算する必要があります。

なぜ新ガイドラインの金額が高いのか

新旧ガイドラインで示された金額の違いの原因の一因として、近年の高仕様な修繕工法が挙げられます。それは人件費であり、資材の高騰も含まれるでしょう。
また、旧ガイドラインの統計母数は筑30年までのマンション。筑30年となれば2日目の修繕工事を終えているものの、インフラライン(給排水、受水槽、エレベーター、機械式駐車場)の更新工事はそう多くはないはずです。新ガイドラインの統計母数は筑30年、40年、50年など既存マンションを全て含んでいます。高経年になればインフララインの更新工事も増えていることでしょう。それに伴い修繕費も累計でみれば当然増えているという事になります。筑30年を境に新旧ガイドラインの母数が違うことが金額の差を大きくしていると考えていいでしょう。

例えばあるマンションの一例として
・筑30年 総専有面積 4,000㎡ 53戸の〇×マンション
長期修繕計画が30年間あり、2度の大規模修繕工事が予定されており、計画期間全体で集める修繕積立金の総額は2億円。現在の残高1千万円。全戸分の平置駐車場があり、駐車場代(5千円/月)は全額修繕積立金に計上されている。均等積立方式を採用。
計算式:
200,000,000+10,000,000+(5,000×53×360)=305,400,000円
305,400,000÷4,000÷360=212円/㎡・月

新旧のガイドラインで異なる修繕積立金の算出法

前述しました長期修繕計画の推定累計修繕工事費を基に計画期間全体で集める修繕積立金の総額から求めると、これほどまでにも毎月の積立金額が上がるという事です。新ガイドラインに示された算出方法には特段異議があると思いません、旧ガイドラインの算出方法の基準は統計値から割り出した金額に対し、新ガイドラインの算出方法は長期修繕計画に計算された必要な累計推定工事費が基準となっており、こちらの方が根拠としては合理的であろうと思います。計画期間全体で集める修繕積立金の総額」は「累計推定修繕工事費」の金額で決まります。

修繕積立金を決める推定累計修繕工事費の見積もり

 言い換えれば、長期修繕計画の推定累計修繕工事費の額により月々の支払う修繕積立金額はいかようにも変えることができるということ。それは管理会社が作成したであろう長期修繕計画の操作にもつながる要因があるため、管理組合は長期修繕計画の作成、見直しに深く関わりをもって注力しなければならないでしょう。金額が高い、安いかの議論ではなく、各修繕項目の内訳、工事周期、改修項目などが適正なのか、妥当なのか、この金額の数字の出どころの根拠は何なのかなど長期修繕計画を作成した担当者からヒアリングする時間と議論する場が求めらるのではないでしょうか。
そして専用使用料を修繕積立金に繰り入れることを前提としていますので、駐車場代が管理費に計上されている管理組合はすこしでも修繕積立金に計上することをお勧めします。

ガイドラインはあくまでも目安でしかない

 このガイドラインは全国のマンションストック地域分布に準じて366のマンションをサンプルにしています。したがってほぼ半分のマンションが関東圏に集中することから、その金額値は関東圏の値に引っ張られる傾向となります。全国731万戸(2020年東京カンテイ調)のストックに対してわずか366戸のサンプルが統計学上どんない意味をもつのかは判断できませんが、今後この金額だけが独り歩きするのではないかと心配します。

現に週刊誌等が早速これに飛びつきました。「積立金65%の値上げ」「積立金335円/㎡」などの記事が踊ります。算出式が違うので当然金額も違うということの説明はありません。
管理組合の不安を煽りかねませんが、この金額はあくまでも目安なので一喜一憂することなく、長い計画のうえで5~7年をめどに見直しをかけていけばいいのではないでしょうか。

ただ、すこしでも早く段階増額方式から均等積立方式に移行することをお勧めします。さらに、均等積立方式からでも必要に応じて値上げも考慮して見直しをかけてみてください。
この機会に、もう一度長期修繕計画に目をとおしてみてはどうでしょうか。

国交省
マンションの修繕積立金に関するガイドライン(新旧対象表)




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