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2021年12月28日火曜日

スケルトンインフィル(SI) 倉敷市中庄団地第2期

 

倉敷市営中庄団地のSI住宅


倉敷市営中庄住宅


スケルトンインフィル(SI)とは

 建築の話をしよう。でも私は建築家ではありません。
スケルトンとは骨格、インフィルはフィルインから名詞形となりインフィルと称し、主に内装と訳される。構造物の骨格(共用部)とレイアウトの自由を許す内装(専有部)とを分けて設計された住宅。とりわけ長寿命を可能にする構造素材とライフスタイルの変容に合わせた間取りの自由度がこのSI住宅のメリットと言われる。

共用部である構造物はとりわけメンテナンスが容易になるように設計される。
既存の一部のマンションでは床下スラブを貫通して排水管が走ることがある、そこで管が破水すれば階下の住居の天井に水がたまることになり、やがて天井から水漏れとなって事故となる。階下住民の天井をはがさねければ排水管の修繕工事を行うことができない。残念ながら、加害者と被害者の図式ができあがってしまう。このようなことはお互いの住民、とりわけ管理組合に多大な不安と負担を強いることになる。

SIにすると

 スケルトンで設計すると床スラブの上に空間をつくりその上に床をはることになる。いわゆる2重床で、この空間に勾配をつけて排水管を廻すことになる。万が一破水しても床下スラブ上に貯まるだけで階下には漏れない。住民も床下を見ることが出来るので、配管の状況とメンテナンスが容易にできるので不安はない。このことは室内レイアウトを自由に変更することを意味する。床下空間のおかげで、給排水管の配管周りは自由に配策することで、台所、風呂場、トイレの位置を自由に変えることができる。既存のマンションではフロア全体が2重床ではないため、このような自由なレイアウトは作れない。
同じように天井も2重天井となる。換気ダクトなどを自由に配策することができる。ベランダにエアコンの室外機を配置きさえすれば、天井裏にダクトを各部屋まで自由に配置することができる。

SDGs指向のSI

 全フロアが2重床と2重天井で設計されれば階高は必然と高くなり最低でも3.5m以上は必要になるのではないかと思う。そして間取りを自由なレイアウトを可能にするために耐力壁を不要とするだけの耐震設計にしなければならない。給排水立管及び電気、ガス本管やメーターなどインフラ設備は共用部分に集中させ、専有部分と分離させる。
昨今SDGsの気運から持続可能な集合住宅とは何かと考えるとスケルトンインフィル指向の住宅は合致しているように思える。

SI集合住宅、先駆けは倉敷市にあり

 というわけで、素人が恐れずも建築の話をしましたが、テーマのお題にもあるように、このスケルトンインフィルのポリシーで設計されたのではないかという住宅が岡山県にもありました。公営住宅が先駆けてSI住宅を手掛けています。
岡山県倉敷市中庄にある倉敷市営団地がそうです。県営と市営が入り混じる団地で県営住宅は平成6年度建築文化賞を受賞しています。
第2期工事からはじまった市営団地群にその設計自由度が与えられ、SIを意識した住宅造りが関係者の間では好評のようです。
 2重床や2重天井ではなく完全なSI住宅とはいえませんが、配管は露出配管を基本とし、住戸のプランや設備改修の容易さを重視した設計となっています。特異なのは、2戸を隔てるコンクリートの壁を1.8メートル分だけコンクリートを抜いているという設計になっています。これは将来2世帯住宅など2戸を合わせて1戸に改修できることを意図するなど、間取りプランを柔軟に変更できることを意味しています。興味ある方は一度見てみることお勧めします。棟をつなぐブリッジのデザインに一般の市営住宅とは違った印象ををもたれることでしょう。

SIマンション分譲 例えば

 今後もし、あるデベロッパーがこのようなマンションを売ることは可能だろうか。
例えば建物(共用部)をつくり、専有部分は床も天井もなくむき出しのコンクリートのみの状態で売る。それを不動産屋が一括購入する。不動産屋は専有部分のレイアウトパターンを数種類用意して、客の要望する間取りに合わせて施工分譲する。どうだろうか。たぶん分譲価格は高くなりそうですね。でもこんなマンションもあってもいいのでは。

グレースタワーⅢ

 両備ホールディングが2018年末、岡山市柳川の交差点のシンボルマークとして分譲したグレースタワーⅢもこのスケルトンインフィルの設計が取り入れられているようです。
さすがに前述のようにむき出しコンクリートのままで、間取りを完全オプション扱いにして売り出すなんてことはしていませんが、定型の間取りを分譲としながらも2重床、2重天井の採用でリノベーションによる自由なレイアウトを可能にしています。
将来のライフスタイルの変容に合わせた間取りが可能ということは定住型のマンションに相応しい設計と思います。
グレースタワーⅢ スケルトンインフィル


なお、スケルトンインフィルの集合住宅として倉敷市営中庄団地の詳細を紹介する本がありました。
「建築設計資料」建築資料研究所








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