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2022年4月8日金曜日

「書面にかえて」の誤解


集会せずに決議をする?
 

 コロナ騒動で非常事態が続いています。年度末の総会が延期のまま開催日時が決まらず、決算報告も新役員の引継ぎもできずに組合運営に支障をきたしています。この時期、早く総会を開きたいという理事長もいることでしょう。

どうしたら総会が開けるのかと理事は頭がいたいところでしょう。
とあるマンションのことです。そのマンションの管理組合の理事は、以前に管理会社の担当者から言われたことを思いだしました。「集会することなく、書面に変えて議決することができますよ」「全戸に議案を送付し、書面で議決してもらう、過半数あれば議案承認ということです」なるほど。総会を開かなくても、「書面で決議」する方法で決議ができるのだ。と思ったことでしょう。

 この理事は、早速理事長にこのことを伝え、早急に書面による決議を実行するよう進言しました。場所、日時を指定せず、集会することなく決議ができるなら都合がいいとばかりに理事長はその準備にかかりました。でも、これダメです。りっぱな区分所有法違反ですから。この理事は、管理会社の担当者の本意を曲げて、都合のいいように解釈したようです。もっとも、「書面にかえて決議ができる」これ自体は正解です。

ただし条件があります。書面にかえての決議とは。では区分所有法ではどう言っているのか見てみましょう。


区分所有法50条

1.規約により総会において決議をすべき場合において、組合員全員の承諾があるときは、書面による決議をすることができる。

2.規約により、総会において決議するべきものとされた事項については、組合員全員の書面による合意があったときは、書面による決議があったものとする。

1において、「集会の代わりに、書面だけで決議してもいいですか」という問いに対し、区分所有者全員が「はい、いいですよ」という承諾が事前に必要ということです。場所、日時を指定せずに集会のかわりに書面決議する場合は事前にこのような手続きを踏まなければなりません。

繰り返しますが承諾の条件は、区分所有者の過半数ではなく、全員の承諾が必要ということです。反対者が1人いても、無回答者が1人でもいたら決議はもちろん、決議する場、方法としてダメということになります。

2において決議する事項では承認(否認)は過半数ではなく全員となります。全員が承認に賛成してこそ承認が決議されるということ。これも過半数ではありません。つまり1において全員が「集会をせず書面で決議していいよ」という承諾を得たのち、2で各議案でも全員が承認しなければその議案は承認されないということ。

この条件けっこうハードル高いですよね。この条件をクリアすること自体、先ずムリです。総会でも欠席者はたくさんいますし、議決権行使書の返事がないのは当たり前です。全員の承諾、承認なんてのはほぼありえません。
これは電磁的方法(メールとかwebとか)にも準用されます。例えweb上での総会を企画していても事前に全員の承諾がいるということですから気をつけてくださいね。


議論なき集会は集会にあらず


 こんなに条件が厳しい背景には、物事を決めるには、いろんな意見を聞いたり、話したりして判断の材料を揃えてから決める。つまり集会での論議を重視してのことでしょう。書面の決議では論議できませんから。双方向の意見交換の場にはなりませんよね。
総会は、決めることより、決めるまでの過程、手続きが大切ですということです。
安易に、議論もせず多数決で決めることは民主的じゃないから止めましょうね。ということを区分所有法で言っているのでしょうか。

予防保全を考える


予防保全とは


 長期修繕計画の作成にあたり、大規模修繕の実施時期、給水ポンプ交換時期、エレベーターリニューアルなど修理、交換などのおおまかな時期を周期単位で項目を挙げている。
管理会社が組合に提示する長期修繕計画は、この周期を前提に交換時期や修理時期の説明しているのはご存じのとおりです。

 「この設備は何年も経過して劣化も激しいことでしょうから、何かあっては皆が困るので早め早めに交換しましょう。この予防保全を行うことでトータルコストを下げる事ができます。」

 唐突にこのように言われても合点がいかない。確かにそれなりの劣化は否めないが、故障しているわけではない。たとえ故障していても即交換とはならないだろう。交換する前に修理という視点はないのだろうか。
「修理を何度も行うことは結果としてコストがかさんでしまいます。修理しても古い部品は残りますからたえず故障リスクは残り続けることになります。」
本当か?


予防保全はコストがかかる?

  計画はあくまで計画であり、長期修繕計画にインターバルが15年とあれば何がなんでも15年で交換することもなかろう。15年の周期はあくまでも目安である。使用頻度も設備環境が違えば当然周期も異なるであろう。この周期の数字が一人歩きしている感も否めない。
しかしながらこの周期とて、根拠が全くないわけではないので、周期の数字は数字として承知しておく事も大事である。

点検の結果を根拠をもとに、周期は大幅に延ばす事ができる。
機械はあくまでも機械である。経年劣化は防ぐことができなくとも、経年劣化が故障に即結びつくというものでもあるまい。たとえ見栄えが悪くとも機能的に衰えがなく、効率的な仕事をしていてくれればまだまだ現役ということである。そのための判断材料として定期的な点検結果があるというものだ。

 しかしながら、この点検の結果をちらつかせて「給水ポンプにちょっと異音がでてますね。この際2台まとめて交換しましょう」などと提案してくる。たしかにポンプが故障したらライフラインは止まるのだが、人を恐怖に落とし込もうとする姿勢がミエミエなのだ。この恐怖心をあおる一言に、慣れない理事会はコロリとだまされてしまう。

 自分が理事の期間中に故障でもしてしまったら責任を問われるかも。なんて頭の中が不安でグルグル回ってしまう。
何も2台とも新品一緒に交換しなくとも、1台をオーバーホールして延命を図り、もう1台はしばらく稼働させたのちオーバーホールさせればよい。オーバーホールの先に2台の時期をずらして交換へともっていけばよい。

 そうして来たる交換時期を先延ばしにする事でランニングコストを下げる。
もっとも、オーバーホールが可能であり、交換とオーバーホールのコスト比較とそのランニングコストの検討は判断を仰ぐことになる。


貴方の車を例えるとしよう。

 新車で買って3年目。車検に訪れたディーラーの営業が、「今不具合がなくてもだいぶ走行距離があるので、買い替えをお勧めします。新車を3年ごとに買い替えれば故障の心配もなく、いつも新車の気分が味わえます、今ならいい値で引き取りますよ。」
大きなお世話である。
車なんて今時最低でも10年はしっかりと乗れる代物。3年ごとに新車を買い替えるコストと、車検で10年乗り続けたコストを比べるがよい。
ちなみに私ごとで恐縮だが、愛車ステップワゴンを初年度登録から20年乗り継いだものです。走って、曲がって、止まるのに何の不具合もありませんでした。機械とは従順であります。


点検あっての予防保全


 予防保全を全否定するわけではありません。外装タイルの浮きを見逃し、落下して人を傷つけたというのでは論外です。日頃パールハンマーを打っていれば事故は防げた事でしょう。こういう場合はちゃんと点検結果に基づいた予防保全が推奨されるべきです。
エレベーターのリニューアルも完全リニューアルを目指すのか、部分リニューアルにするのか。
最高セキュリティのシステムを推奨する会社と最低限のシステムを推奨する会社のどちらを選択するのか。原資に限りがあり優先度というものがある以上、どこかで妥協するにしても、小さな修理の積み重ねで稼働時間は大幅に伸びるということを知るべきでしょう。
物理的な故障をほとんど起こさないのがエレベーターです。
故障と言われるものの大半は制御系、つまり制御ソフトとブラックボックス化した制御基板です。
リニューアルを持ち込む理由として、安全装置に係る法改正による最新のシステムの導入、部品供給の廃止、在庫不足による修理、交換が不可となる懸念が理由として挙げられます。
単に20年の経過により判別されるものではなく、点検(無線遠隔ではなく)の結果をもとに判別し、そこから少しでも稼働を長くできるような工夫を考えるべきでしょう。
何が予防保全に相応しいのか。何が事後保全に相応しいのかを検討するのも一考です。

部品供給を例にとっても、ASSY交換しかできないものと、分解した部品単位で交換できるものがあります。ASSY単位の交換であれば本来調子のよい部品も交換させられてしまうことになります。どちらもトータルコストを下げるための判断材料をもっておくといい。

岡山市マンション管理実態調査

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