Powered By Blogger

2022年1月29日土曜日

専有部分での営利活動について

 標準管理規約第12条の解釈


ある管理組合の理事長の相談

「1階の〇〇号室の奥さんが部屋で客をとって整体の施術をしているようでです。ここはマンションだから、お店のような営業活動は禁止のはずです。やりたければ、事務所借りるなど外でやってくださいと言っているのですが、言う事を聞いてくれません」さらに、
「標準管理規約12条の規約がこのマンションにもあります。あきらかに規約違反ですが、納得してくれないんです。営業を止めさせるにはどうしたらいいでしょうか」

標準管理規約第12条(専有部分の用途)

・区分所有者は、その専有部を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

専ら(もっぱら)とは、辞書では「ある一つの事を主とするさま」とあります。
主に住宅として使用するというのは問題ないでしょう。問題は「他の用途に供してはならない」との意味です。つまり、専ら整体用の施設には供してはならない、あるいは専ら住宅以外の用途に供してはならないと解釈するのが適当だといえます。
12条のコメントには「住宅の使用は、専ら居住者の生活の本拠があるか否かによって判断する。したがって利用方法は、生活の本拠であるために必要な平穏さを有すること要すとあります。

1階の奥さんがそこを住宅として利用し、寝泊りして日常の生活を営むとすれば、ひとまずは何も問題ないはずです。専有部を住居の本拠とし、近隣に迷惑をかけることなく平穏さを維持しているようであれば、たとえその日常の生活の中に仕事が内在したとしても、平穏を有していれば責められるものではないでしょう。内職などがそのいい例です。
コロナ禍といわず、いろいろな働き方があるはずです。一応に会社という場所で働くばかりが仕事ではなくなりつつあります。普及しつつあるリモートワークは新しい働き方の一つといえるでしょう。ならばこれら社会の働く様の変容に合わせて規約の解釈、法の解釈も少し幅に余裕を持たせる余地もあるのではないかと思います

 この奥さんの話によれば、整体の施術の客というのは、ほぼ特定の友達だそうです。あるいは友達からの口コミで訪れたお客というものでした。また営業時間など決めることなく自分の空き時間を利用した不定期なものでした。
自らの過去の施術経験をもとに行っているというもので、整体というよりは、ストレッチが主で整体として免許をもって施術するような本格的なものではなさそうです、この奥さんの人柄の良さも手伝ってか、雑談の相手として定期的に通う方もいらしゃるようです。
また、お客を誘導するために玄関や窓に看板や広告の類もありません。
つまり業として営利活動はしていないということです。

この12条の条文だけをもって専有部分での営利活動の禁止を説くには無理があります。
問題はこの奥さんの行為(営利活動)が12条と併せて、66条に触れているかどうかです。


標準管理規約第66条(義務違反者に対する措置)

・区分所有者又は占有者が建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、区分所有法第57条から第60条までの規定に基づき必要な措置をとることができる。

この奥さん、またはお客が、故意であろうとなかろうと、結果的に上記のように「共同の利益に反する行為」を行っているのであれば、その原因をつくりだした奥さんの責任は問われることになるでしょう。
例えば不特定多数のお客が押し寄せて共用廊下を塞ぐ、エントランスが騒がしい。お客が違法駐車を繰り返して出庫を妨げている。騒がしく夜眠れない。不特定多数の人が出入りし、セキュルティ上問題がある。等々著しい場合、共同の利益に反する行為として認められてしまいます。

この件を理事長に問い合わせたところ、別段実害を受けているという報告は受けていないとのこと。ただ、被害があろうが、なかろうが、違反は違反です。という理屈のようです。
まぁ、言い分はわかりますが。

 単に規約の条文だけで切り取って、物事の白黒を決めつけるのではなく、そのことにより結果として現在どのような実害を被っているか否かの客観的な判断も必要ではないでしょうか。
マンションの形態、規模がどうであれ、共同住宅として多くの住民が日々生活を営んでいます。一つの建物に暮らすというには、ある一定のルールは必要でも互いに受忍し合うことも暗黙としてあるのではないでしょうか。

2022年1月26日水曜日

統計からみる岡山(中国・四国)【耐震と老朽化】

 都会のマンション、中国・四国のマンション




【耐震と老朽化】


 今回は耐震と老朽化についてです。旧耐震基準で建てられたマンションであれば、耐震診断は必至でしょうが、、新耐震基準(昭和56年以降)で建てられたマンションなら耐震診断を行わなくてもいいというわけでは決してありません。しかし実際にはその必要性を認識しながらも、経済的な理由で診断を躊躇している管理組合が多いことは容易に想像できます。

 耐震診断の目的は、先ずは自分のマンションの耐震強度を知ることに尽きます。耐震改修ができる、できないに関わらず、まずは診断を行って、自分のマンションの現状を知ること重要です。どうせ改修しないから、診断は無駄だということにはなりません。
2021年長期修繕計画のガイドラインにも耐震診断は必要であると明記されたことから、今後この動向に注目されますが、行政からの助成金を含めた制度支援に期待したところです。

 老朽化問題、例えば建替えなど論議は、よほど好条件に立地されているマンション以外、現実的には難しいでしょう。しかし今後建替えもしない、補修もしない高経年マンションが増えていく中、「マンションの終わらせ方」をいかに具体化させるのかが注目されます。

1.旧耐震基準と新耐震基準  (上段:回答数 下段:%)
合計旧耐震基準新耐震基準不明
中国・四国
2181217720
1005.581.213.3
東京圏
36212522017
10034.560.84.7
京阪神圏
2225614719
10025.266.28.6

都市圏では筑古マンションも多く旧耐震基準のマンション率も多い。中国・四国は築浅マンションが多いため新耐震基準マンションの比率が高い。


2.耐震診断実施の有無及びその結果  (上段:回答数 下段:%)
旧耐震基準に基づき建設されたマンション管理組合耐震基準として、耐震性があると判断された耐震愛診断をして、さらに詳細な耐震診断が必要と判定された耐震診断をして、耐震性がないと判定された耐震診断をしていない不明
中国・四国
12--1101
100--8.383.38.3
東京圏
125171125702
10013.68.820.056.01.6
京阪神圏
561123391
10019.63.65.469.61.8

旧耐震基準で建てられたマンションはほぼ、耐震診断を行っていない。


3.耐震性がないと判定されたマンションの耐震改修の実施の有無
  (上段:回答数 下段:%)

耐震性がないと判定された管理組合合計実施したまだ実施していないが今後実施する予定実施する予定はない不明
中国・四国
11---
100100.0---
東京圏
2510771
10040.028.028.04.0
京阪神圏
32-1-
10066.7-33.0-

耐震診断後、改修済、改修予定を含めると過半数を超える割合となる。関東圏は地震には敏感なのだろうか

4.耐震診断を行っていない理由(重複回答)  (上段:回答数 下段:%)
耐震診断を行っていない組合合計現在検討中または今後行う予定である予算がないため耐震診断を行っていない組合員の反対があり、耐震診断を行っていない耐震診断をどこへ頼めばいいのか分からないこれまで考えたことはない不明
中国・四国
1023--32
20.030.0--30.020.0
東京圏
70282441134
40.034.35.71.418.65.7
京阪神圏
3951932121
12.848.77.05.130.82.6

理由は、耐震診断の予算がないのと同時に改修する予算がないから「検討中」としているところも考えられる。

5.耐震性についての考え(区分所有者向けへの質問)  (上段:回答数 下段:%)
合計比較的新しく耐震性が確保しているので心配していない耐震性が確保されているかわからないので心配だ大規模な地震の場合は被害を受けると思うので心配だ地震の不安はあるが今のままで仕方ない考えたことがない不明
中国・四国
4372115368811410
10048.312.115.618.53.22.3
東京圏
67329864121163198
10044.39.518.024.22.81.2
京阪神圏
426187418110494
10043.99.619.024.42.10.5

都市圏では不安・心配と感じる人は過半数を超えるが中国・四国は心配ないと感じる人の比率の方が多い。過去の記憶と地震の警戒感がそうさせるのだろうか

6.老朽化問題についての対策の論議の有無 (上段:回答数 下段:%)

合計あるない不明
中国・
四国
2186513815
10029.863.36.9
東京圏
3621601948
10044.253.62.2
京阪神圏
2227713312
10034.759.95.4

築古マンションが多い関東圏は、老朽化対策あり、なしの比率が拮抗している。

7.老朽化問題についての議論の方向性  (上段:回答数 下段:%)
老朽化問題について対策を議論したことがある組合合計建替え等の方向で議論し、具体的な検討をした修繕・改修の方向で議論し、具体的な検討をした建替え等の方向、修繕・改修の方向の両面で議論し、建替え等の方向で具体的な検討をした建替え等の方向、修繕・改修の方向の両面で議論し、修繕・改修の方向で具体的な検討をした議論はしたが、具体的な検討をするに至ってない不明
中国・四国
65-3411281
100-52.31.51.543.11.5
東京圏
160175616575
1000.646.93.810.035.63.1

老朽化しても、建替えの議論よりも修繕・改修の方向で議論が進んでいる。現実的にはこうならざるを得ない。

次回はトラブル編の予定です

☆自己紹介☆

自己紹介 こんにちは! 加藤典保といいます。 岡山県マンション管理士会で副会長やってます! マンション居住歴30余年でもあります。 マンション管理士と名乗ってもマンションに住んだことがないマンション管理士とは一線を画します(笑) あなたのマンションについてのお悩みや相談など困りご...