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2022年5月13日金曜日

がんばりすぎる理事長

 理事長さんもいろいろ


 マンションの規模も様々です。

100世帯を超える大規模なマンションもあれば、20世帯ぐらいの比較的小さなマンションなどさまざまです。

所有目的も永年住居型、投資型、リゾート型、ビジネス用1ルーム型などなど。

どんなマンションにも分譲である限り、専有部分を所有する区分所有者が複数人存在し、必然的に管理組合が存在します。そして、管理組合の執行機関として理事会も存在することになります。機能しいているかどうかは問わずとも、一応でも理事会は存在するわけで、理事長も存在しているはずです。

理事長さんの勘違い

 輪番制で理事長になった方は、何事もなく無事に任期を終えることを望んでいる方もいることでしょう。管理会社に丸投げしておいて、管理会社からまわってくる決済書類にハンコを押し、担当者のうんちくにうなずいていれば、理事長の職務を全うしたと持っている方もいることでしょう。ハンコを押すたびに、ご自身はさぞ理事長としてのステイタスを感じることが勘違いの始まりです。

勘違いする理事長は他にもいるようです。


MUST理事長

 「MUST理事長」とは、「~でなくてはならない。」「~するべきである。」と思い込みが激しい理事長さんです。

「住民間のルールは~でなくてはならない。」「そのルールを破った〇〇さんは~するべきである。」などなど。いろんな場面でこういう事柄に出くわします。

~しなくてはならない、あるいは、~するべきであるという観念に固着し、すべてが理事長の恣意的ともいえるMUST用語が羅列します。

他の意見を聞き入れる寛容さは失われ、自分の思い描いているイメージどおりでないと気分を悪くするようです。

制約を強い、恣意的な教条主義に走ってしまう大きな勘違い。

こういう方が理事長になると、自分の物差しから外れる事は我慢できないようです。

そして、自分が「正義」だと勘違いされていることです。やがて住民からうさんくさく思われ孤立化してしまいます。

でもこういう熱血漢の理事長がいるこらこそ救われることも多いのも事実です。

即断即決、思い込んだら一直線なので、何事も迅速で、躊躇がありません。

それは頼もしくもありますが、示唆に欠けて判断が危なっかしく思えます。


がんばりすぎる理事長

「自分は管理組合のために理事長として汗をかいてがんばっている。こんなにがんばている自分は一目置かれて当たり前であり、自分の意見は疑う余地は無いから皆は自分の言う通りにしなくてはならない。」非常に困ったチャンでメンドクサイ人なのです。

やたらと熱度が高く、声が大きい。がんばり感モリモリなのです。

 経験上ですが、このようながんばる理事長を観察してみると、

  ・定年退職して家でブラブラ

  ・ついつい攻撃相手を探してしまう

  ・サラリーマン時代は管理職

  ・マンションが会社に、住民が部下に見えてしまう

  ・俺が、俺がの自我の塊と熱度で押しまくる。

  ・自分の事はよく話すが、他人の話はほとんど聞いていない

理事長として熱度をあげることは非常に喜ばしいことですが、その熱度のはけ口がちょっと違います。やたらとがんばり感を出す理事長もちょっと勘違いしているようです。


理事長さんはがんばらくていい

〇「じゃぁ、誰がやるんですか?誰もやらないから自分がやってるんですよ」と息巻く。

「その熱心さは感服します。ただ管理組合の運営は事案の可否を決めるのは二の次です。」

〇「誰も決められないから自分が決めるしかないでしょう。他の理事は、理事会にも出席しないので決まるものも決まらない。」

「先ほども言いましたように、決めるのは二の次です。決めるまでの過程、手続きを大切にしましょう。皆で相談して決めたという過程を大事にしましょう。」

「その熱意を住民の方々とのコミュニケーションを図る方向に向けたらどうでしょうか。住民の同意を得られるように、時には腰を低くし、説明する時間と、根気よく意見を聞く姿勢も大切でしょう。」

「住民の皆さんを巻き込んで管理組合と理事会を活性することが一番の仕事だと思いますよ。」

〇「自分ががんばってるから、この管理組合が機能しているんですよ。他人に任せられません。」

「あなたは充分頑張りました。ご苦労さまです。今度はみんなが頑張れる場をつくるのが理事長さんのお勤めかなとも思います。もうあなた自身が頑張らなくてもいい環境をつくりましょう。」

あなたのマンションの管理費は

駐車場使用料はどこに計上している?



 管理費についての相談はよくあることです。
「うちの管理費は高いのか安いのか、そもそも適正な価格なのか、相場が知りたい。」という内容が最も多いと思います。

先ず管理費は原則、建物の維持管理、メンテナンスにかかる費用と,管理会社に支払う委託管理費(管理会社により費目名がちがいます)
メンテナンスにかかる費用には毎月、定期的にかかる施設点検、清掃(エレベーター、給排水施設、受水槽など)や消防設備点検などにかかる費用など定期点検、法定点検にかかる費用が含まれます。
この他にも清掃、植栽、そして共有部分の電気代などがあります。

維持管理にかかる費用では、小口の修繕費、消耗品(電灯、清掃用具など)、他には管理費収納に関わる事務手数料(振込、引き落とし)など。
これらの費目は年間通じて予想される金額なので予算化するのにあたり、ある程度の金額を予想することができます。いいかえれば、おたくのマンションは年間いくら維持管理費がかかるかという事がわかります。
この年間の維持管理費とは別に管理会社に支払う委託管理費の合計が管理費となります。


駐車場使用料を管理費に計上するワケ


 例えば、マンション1棟分(仮に50世帯)の管理費25/月のうち18万円が種々の維持管理、メンテナンスにかかる費用で残りの7万円が管理会社に支払う委託管理料とします。
そうすると1世帯あたりの管理費は5千円/月という金額が設定されます。実際には予備費を計上して少し上乗せして多少の繰り越しが出るように設定します。

しかし、マンション分譲時のデベロッパーは、お客の購買意欲をそそるため、この管理費をわざと安く設定するのが通常です。
その安くした分の穴埋めに使われるが駐車場使用料です。これが管理費のカラクリです。
例えば駐車場使用料は6千円/月と設定し、それを全額管理費に回すような会計処理を行うことで実質駐車場使用料だけで管理費を補うことがでます。
管理費を3千円/月に設定すれば2千円/月も安いということななります。この余ったお金は次期繰り越しとなりますが、長年このような会計処理を行うと管理費の繰り越しが必要以上に貯まることになります。

必要以上に貯まった管理費のもとで毎年管理会社からいろんな提案がなされるようであれば、それは管理費をもっと使いましょうと言っていることです。
そもそも管理費は通常の維持管理に用されるものなので、特別の用に使われるのであれば修繕積立金から引き落とされなければなりません。
管理費を使っての工事はせいぜい小規模な修繕や更新工事程度のものであり、あらたな施設を新設するような工事は修繕積立金から引き落とすべき性質ものです。

ある程度貯まった管理費を吐き出させるため、管理会社はなんらかの提案を持ち込み、施設工事やら更新工事に使おうとします。そうして駐車場使用料は管理費として喰われることになります。
国交省ではこの管理費と修繕積立金との計上する費目を細かく規定しています、ただ駐車場料金を管理費に計上していても違反とするような規定はありません。
マンション個々の実情を鑑みてのことでしょうが、駐車場使用料は修繕積立金に計上するのが望ましいというコメントを出しています。


駐車場使用料は貯めるもの


 本来管理費は貯めることが目的ではなく、貯める目的なものは、修繕繕積立金です。
したがって駐車場使用料は全額そのまま修繕積立金に積み立てていくことがマンションの資産価値を高めることに直結します。
駐車場使用料で管理費を穴埋めしていては、肝心な修繕積立金を貯めることができなくなります。今、修繕積立金が足らなくて修繕工事ができなき管理組合が非常に多くあります。
足らない理由の一つとして、駐車場使用料を管理費に計上していたということも一因となっていることもありましょう。早くからこのことに気づいて是正していればと思います。
大規模なマンションでは、そもそも駐車場を無料とするところもあります。

しかしながら小さなマンションで、管理費が危ういところは、あえて駐車場使用料を管理費に計上しているところもあります。修繕積立金の余裕もなく管理費にも困るマンションでは、しかたのないことかもしれません。


修繕積立金は駐車場使用料に含む


 修繕積立金の設定は、この駐車場使用料込みで考えていくことが大切です。
このマンションの場合、修繕積立金を1戸あたり4千円/月と設定すれば、駐車場使用料と合わせて1万円/月となり、マンションとして合計で年間600万円を貯めることができます。
1215年周期の大規模修繕時には7200万円~9000万円超を貯めることができます。
積み立てる金額は多ければその分支出に対してもいろんな選択ができます。お金がなければ何もできません。今はそんなに貯めなくてもいいと考えても、マンションにかかる費用は修繕工事だけではなく、機能的なリニューアル工事、セキュリティとバリアリーフのための機能向上を有する工事などに費やすことができます。

時代に必要とされるマンションの機能と形態に対応しなくては、やがてそのマンションは陳腐化していくでしょう。当然マンションの資産価値は下がります。ただ外観がきれいだけで、機能的に時代遅れのマンションに需要があるとは思いません。

そのための工事は大規模修繕工事とは別に考えなければならない工事でしょう。高経年マンションの場合、やがてくるだろう建替えの費用も選択肢に入ってきます。だからこそ、中長期的な視野にたっての資金づくりが必要になります。
これらの積立金額の計算は、個々の経済事情、建物劣化、人件費等で変動するものです。修繕計画は5年単位でその金額を見直す作業が必要になるでしょう。


管理会社も知っているカラクリ


 駐車場使用料を管理費に計上するカラクリは管理会社も周知のとおりです。
もっとも、知っていても会社に不利になるようなことをマンション住民の方々にあえて説明することはないでしょう。
  • 駐車場使用料で管理費を埋め合わせ、管理費が安いことを強調。
  • 様子を見て、他に比べて管理費が安い事を理由に管理費を値上げ提案。
  • 駐車場使用料が、管理費に喰われているので修繕積立金は貯まらない。
  • 様子見て、修繕積立金も値上げを提案。
このようなカラクリでマンション管理業界はまわっています。
 お宅のマンションの駐車場使用料が管理費に計上されているのか、修繕積立金に計上されているかを調べてみてはどうでしょうか。
 

2022年4月8日金曜日

「書面にかえて」の誤解


集会せずに決議をする?
 

 コロナ騒動で非常事態が続いています。年度末の総会が延期のまま開催日時が決まらず、決算報告も新役員の引継ぎもできずに組合運営に支障をきたしています。この時期、早く総会を開きたいという理事長もいることでしょう。

どうしたら総会が開けるのかと理事は頭がいたいところでしょう。
とあるマンションのことです。そのマンションの管理組合の理事は、以前に管理会社の担当者から言われたことを思いだしました。「集会することなく、書面に変えて議決することができますよ」「全戸に議案を送付し、書面で議決してもらう、過半数あれば議案承認ということです」なるほど。総会を開かなくても、「書面で決議」する方法で決議ができるのだ。と思ったことでしょう。

 この理事は、早速理事長にこのことを伝え、早急に書面による決議を実行するよう進言しました。場所、日時を指定せず、集会することなく決議ができるなら都合がいいとばかりに理事長はその準備にかかりました。でも、これダメです。りっぱな区分所有法違反ですから。この理事は、管理会社の担当者の本意を曲げて、都合のいいように解釈したようです。もっとも、「書面にかえて決議ができる」これ自体は正解です。

ただし条件があります。書面にかえての決議とは。では区分所有法ではどう言っているのか見てみましょう。


区分所有法50条

1.規約により総会において決議をすべき場合において、組合員全員の承諾があるときは、書面による決議をすることができる。

2.規約により、総会において決議するべきものとされた事項については、組合員全員の書面による合意があったときは、書面による決議があったものとする。

1において、「集会の代わりに、書面だけで決議してもいいですか」という問いに対し、区分所有者全員が「はい、いいですよ」という承諾が事前に必要ということです。場所、日時を指定せずに集会のかわりに書面決議する場合は事前にこのような手続きを踏まなければなりません。

繰り返しますが承諾の条件は、区分所有者の過半数ではなく、全員の承諾が必要ということです。反対者が1人いても、無回答者が1人でもいたら決議はもちろん、決議する場、方法としてダメということになります。

2において決議する事項では承認(否認)は過半数ではなく全員となります。全員が承認に賛成してこそ承認が決議されるということ。これも過半数ではありません。つまり1において全員が「集会をせず書面で決議していいよ」という承諾を得たのち、2で各議案でも全員が承認しなければその議案は承認されないということ。

この条件けっこうハードル高いですよね。この条件をクリアすること自体、先ずムリです。総会でも欠席者はたくさんいますし、議決権行使書の返事がないのは当たり前です。全員の承諾、承認なんてのはほぼありえません。
これは電磁的方法(メールとかwebとか)にも準用されます。例えweb上での総会を企画していても事前に全員の承諾がいるということですから気をつけてくださいね。


議論なき集会は集会にあらず


 こんなに条件が厳しい背景には、物事を決めるには、いろんな意見を聞いたり、話したりして判断の材料を揃えてから決める。つまり集会での論議を重視してのことでしょう。書面の決議では論議できませんから。双方向の意見交換の場にはなりませんよね。
総会は、決めることより、決めるまでの過程、手続きが大切ですということです。
安易に、議論もせず多数決で決めることは民主的じゃないから止めましょうね。ということを区分所有法で言っているのでしょうか。

予防保全を考える


予防保全とは


 長期修繕計画の作成にあたり、大規模修繕の実施時期、給水ポンプ交換時期、エレベーターリニューアルなど修理、交換などのおおまかな時期を周期単位で項目を挙げている。
管理会社が組合に提示する長期修繕計画は、この周期を前提に交換時期や修理時期の説明しているのはご存じのとおりです。

 「この設備は何年も経過して劣化も激しいことでしょうから、何かあっては皆が困るので早め早めに交換しましょう。この予防保全を行うことでトータルコストを下げる事ができます。」

 唐突にこのように言われても合点がいかない。確かにそれなりの劣化は否めないが、故障しているわけではない。たとえ故障していても即交換とはならないだろう。交換する前に修理という視点はないのだろうか。
「修理を何度も行うことは結果としてコストがかさんでしまいます。修理しても古い部品は残りますからたえず故障リスクは残り続けることになります。」
本当か?


予防保全はコストがかかる?

  計画はあくまで計画であり、長期修繕計画にインターバルが15年とあれば何がなんでも15年で交換することもなかろう。15年の周期はあくまでも目安である。使用頻度も設備環境が違えば当然周期も異なるであろう。この周期の数字が一人歩きしている感も否めない。
しかしながらこの周期とて、根拠が全くないわけではないので、周期の数字は数字として承知しておく事も大事である。

点検の結果を根拠をもとに、周期は大幅に延ばす事ができる。
機械はあくまでも機械である。経年劣化は防ぐことができなくとも、経年劣化が故障に即結びつくというものでもあるまい。たとえ見栄えが悪くとも機能的に衰えがなく、効率的な仕事をしていてくれればまだまだ現役ということである。そのための判断材料として定期的な点検結果があるというものだ。

 しかしながら、この点検の結果をちらつかせて「給水ポンプにちょっと異音がでてますね。この際2台まとめて交換しましょう」などと提案してくる。たしかにポンプが故障したらライフラインは止まるのだが、人を恐怖に落とし込もうとする姿勢がミエミエなのだ。この恐怖心をあおる一言に、慣れない理事会はコロリとだまされてしまう。

 自分が理事の期間中に故障でもしてしまったら責任を問われるかも。なんて頭の中が不安でグルグル回ってしまう。
何も2台とも新品一緒に交換しなくとも、1台をオーバーホールして延命を図り、もう1台はしばらく稼働させたのちオーバーホールさせればよい。オーバーホールの先に2台の時期をずらして交換へともっていけばよい。

 そうして来たる交換時期を先延ばしにする事でランニングコストを下げる。
もっとも、オーバーホールが可能であり、交換とオーバーホールのコスト比較とそのランニングコストの検討は判断を仰ぐことになる。


貴方の車を例えるとしよう。

 新車で買って3年目。車検に訪れたディーラーの営業が、「今不具合がなくてもだいぶ走行距離があるので、買い替えをお勧めします。新車を3年ごとに買い替えれば故障の心配もなく、いつも新車の気分が味わえます、今ならいい値で引き取りますよ。」
大きなお世話である。
車なんて今時最低でも10年はしっかりと乗れる代物。3年ごとに新車を買い替えるコストと、車検で10年乗り続けたコストを比べるがよい。
ちなみに私ごとで恐縮だが、愛車ステップワゴンを初年度登録から20年乗り継いだものです。走って、曲がって、止まるのに何の不具合もありませんでした。機械とは従順であります。


点検あっての予防保全


 予防保全を全否定するわけではありません。外装タイルの浮きを見逃し、落下して人を傷つけたというのでは論外です。日頃パールハンマーを打っていれば事故は防げた事でしょう。こういう場合はちゃんと点検結果に基づいた予防保全が推奨されるべきです。
エレベーターのリニューアルも完全リニューアルを目指すのか、部分リニューアルにするのか。
最高セキュリティのシステムを推奨する会社と最低限のシステムを推奨する会社のどちらを選択するのか。原資に限りがあり優先度というものがある以上、どこかで妥協するにしても、小さな修理の積み重ねで稼働時間は大幅に伸びるということを知るべきでしょう。
物理的な故障をほとんど起こさないのがエレベーターです。
故障と言われるものの大半は制御系、つまり制御ソフトとブラックボックス化した制御基板です。
リニューアルを持ち込む理由として、安全装置に係る法改正による最新のシステムの導入、部品供給の廃止、在庫不足による修理、交換が不可となる懸念が理由として挙げられます。
単に20年の経過により判別されるものではなく、点検(無線遠隔ではなく)の結果をもとに判別し、そこから少しでも稼働を長くできるような工夫を考えるべきでしょう。
何が予防保全に相応しいのか。何が事後保全に相応しいのかを検討するのも一考です。

部品供給を例にとっても、ASSY交換しかできないものと、分解した部品単位で交換できるものがあります。ASSY単位の交換であれば本来調子のよい部品も交換させられてしまうことになります。どちらもトータルコストを下げるための判断材料をもっておくといい。

2022年3月11日金曜日

本末転倒 駐輪場使用料設定してガラ空き

 専用使用料設定の目的


荒れる駐輪場

 どこのマンションにも駐輪場は設置していることでしょう。自転車とオートバイなど置き場所を分けている所も少なくありません。
よく、マンションの管理状況を判断する目安としてでてくるのが駐輪場の管理所状況です。
壊れた自転車の放置、幼児用3輪車の保管、空気入れ、鍵チェーン等自己所有物の放置、明らかに住人のものではない自転車、オートバイ用のオイル廃棄缶などまるで倉庫を兼ねているかのようになってしまった荒れた駐輪場が散見されます。

どのマンションも一度はこのような状況に対処するために、定期的に不要自転車の撤去や所有者を明確にするためにタグなどをつけて識別化していることでしょう。
駐輪場がいつも整然としていることは、住民のマナーはもとより、管理面もしっかりしているという目安になります。整列方法もパラレル式の駐輪機を設け、利用細則などを取り決めていますので急激に駐輪場が荒れるということはないでしょう。

平面駐車場が確保できる敷地があるマンションでは、おおむね世帯数の自転車が駐輪できるスペースを設計しています。しかし家族構成の移り変わりにより自転車の保有台数もある時期をピークにして、減少していくのが通例です。やがて自転車を保有する世帯がだんだん少なくなっていき、やがて駐輪場の置く自転車の数は減っていきます。

安易な駐輪場使用料導入

 駐輪場がやがて荒れていくマンションは、利用者にマナーだけに訴える事しかやってこなかった管理組合が多いようです。
これだけでは、効果に限りがあります。マナーを訴えるのも大事ですが、整列させる機器の導入などの検討も必要でしょう。整列させるためのしかけもまた必要でしょう。
やがて、ある理事会は雑然とした駐輪場に業を煮やして「使用料」を取るという安易な方向で解決しようと考えます。

たしかに駐輪場に使用料を設定しているマンションもあります。
このようなマンションは大規模で世帯数の割には敷地面積が狭く、駐輪スペースも初めから少なく限定的な利用者にならざるを得ないという前提があります。そしてこのようなマンションでは規約でその旨が明示されています。
また、駐輪場のキャパを考慮して各世帯1代目は無料とし、2代目から使用料を徴収するというところがあります。

駐輪場は共有部分ですから、エレベーター利用と同じく利用者の頻度ではなく、皆が等しく利用できるという前提があっての付属物です。
当然に駐輪場は利用されるべきものという前提があるのに、使用料を設定して利用者のだけに負担を強いるのはおかしいのではないでしょうか。

理事会は各世帯に台数に関係なく一律に利用する自転車に使用料を徴収する案を総会に上程しました。残念にも漫然とした組合員は、この議案を可決しました。
しかし、雑然とした駐輪場の管理を具体化する検討もしないのに関わらず、安易に使用料を徴収すれば利用者が減るだろういう意図が見えます。

整列させる工夫を提案せず、駐輪場の管理をせずに安易に利用者を管理したにすぎません。
先ずは不要自転車の破棄から始まり、整列させるための機器導入の検討、使用最速の検討など、対処する方法はいくつもありますが、その過程を全部飛ばしてしまうことは理事会の適応力不足、不作為ともいえるのではないでしょうか。

ガラ空きになった駐輪場

 事実このマンションではその後、不要自転車の破棄した後、利用台数が激減して駐輪場がガラガラになってしまいました。
一部の利用者はお金をとられるぐらいならということで専有部分に保管するという人が増えたそうです。
駐輪場を利用したいとする人がいるものの、使用料を払うことに違和感を感じて駐輪場を嫌煙する人も少なくありません。
駐輪場を利用する人はキャパが充分にあるのにかかわらす、使用料を負担する羽目になっています。

せっかくの駐輪場が、使用料を徴収することで、利用者を減らす役目を担ってしまったという本末転倒の結果となってしまいました。
駐輪場の管理をせず、利用者を管理した本末転倒の例です。

正しいより親身であること

どこまで汗をかけるか


入居してから知るトラブル

 マンション住民からみた場合、頼りになる管理会社や理事会とはどのようなものでしょうか。
マンションを購入した人にとって、そのマンション立地、間取り、周辺環境、建物外観、仕様などマンションの建物と専有部分ばかりに目がいってしまうのはしょうがないことでしょう。
住み始めて時間もたてば「こんなはずじゃなかった」とか「こんなトラブルにまきこまれた」とかマンションならではの対隣人生活トラブルというものを経験することも少なくありません。マンションを購入するときはそのような問題など考えていませんでした。

 ご存じのとおりマンションは集合住宅ですから上下階と左右に隣人が住んでいます。
隣人は年代も違えば家族環境も違う。サラリーマンもいれば自営業の方もいる。昼に働いている人々ばかりではありません。夜働いている人も当たり前のようにいます。

生活様式のパターンも違えばその生活に対する様々な価値観も違います。
そんなお隣さん同士ですから、ゴミ出しのルールを守らない、床をドタバタ走ってうるさい、テレビの音がうるさい、ピアノだのギターだの夜中にうるさい、ベランダのタバコの煙が臭いだのとにかく隣人のことが気になるものです。

こんなはずじゃなかった

 気になる程度のものが、やがて苦痛にかわり、クレームとなって住民間のトラブルになってきます。こうなるとせっかく購入したマンションですから、自分が想う理想の生活環境を守ろうと頑張ってしまいます。自分は正しい、受忍限度を超えてる。私は被害者であるから加害者を正さなくてはならないというような軸方向に感情が向かってしまいます。

 みなさんのマンションにもこのような住民は少なからずいることでしょう。
いや、このような人を悪くいうつもりは全くありません。その逆です。
このような方が、ある日クレームとして管理会社や理事会に「なんとかしてください」と相談をもちかけたとしたら、あなたが管理会社の担当者、あるいは組合の理事長であればどうのように対処するでしょうか。

フロントの対応

 あなたが管理会社の担当者として
管理会社担当者Aの場合
 「マンション住民間、個々のトラブルは管理会社としては責任をとることができません。当事者同士で話し合ってください。」
 「いや、どこにでもあるんですよ。こういう問題。おたくだけじゃないんですよ。」
 「理事長さんに言ってください。うちじゃできません。そもそも委託契約外ですから」

 この担当者の返事は管理会社として判を押したような規定型のまっとうな回答です。たしかに委託業務契約に住民間のトラブルに介入するような職務はありません。言葉足らずと言えども、正しい答えといえばたしかにそうのようです。
 悪く言えば、金にならない仕事はしません。クレーマーまがいの電話をかけてくるなという感を出します。

管理会社担当者Bの場合
 「そのようなマンション住民間の個々のは管理会社としては責任をとることができません。しかし、住民間で話し合う場合、お互いの感情論になってしまうので、かえって問題を深くしてしまいます。なので管理組合の問題として提起しましょう。今度の理事会にそのような問題があることを理事会に報告いたします。事前に理事会の了承をとりますので、同席のうえ、そのようなトラブルに遭われた日時、症状など記録として資料をお持ちいただき話をを伺うことにしましょう。理事会と調整します。」

 管理会社が直接手を下して対処する用件ではなくとも、その用件は管理組合が対処するべきことを自然に誘導し、かつその人を理事会に入れて話しを聞く場を持たせることで、その人の顔をたてることができます。担当者は調整役に徹します。答えは出しません。


理事会の対応

 他方、管理会社ではなく、管理組合にこの問題を投げかけたいという場合。
管理組合のポストに相談依頼の文書を投函
理事会Aの場合
 理事A「また、〇〇さんから△△の件でクレームの投函がありました」
 理事B「これで3回目ですよ。ちゃんと話を聞いたほうがいいのではいないでしょうか」
 理事長「いや、彼は変わってますから。また話合ってもきりがないですよ。他の人からクレーマーに近い人だと聞いています」
 理事C「理事会で何度もこの問題をスルーしてますからね。それに対する当てつけかなとも思います」
 理事長「まぁ。今回も静観しましょう。そのうち、またおとなしくなりますよ。」

理事会Bの場合
 理事A「また、〇〇さんから△△の件でクレームの投函がりました」
 理事B「問題を先送りにしたのがまずかったようですね。」
 理事C「住民間のトラブルは管理組合の問題ですから、何かしらの解決策を模索しましょう」
 理事長「再度彼を読んで話を聞きましょう。管理組合の問題ですからね。理事会が第三者的な立場で住民間のトラブルに向き合っていきましょう」
 理事C「当事者の言い分に対し、理事会と一緒に対処案が出せるといいですね。」

どこまで汗をかけるか

やっぱり人間力 
契約あるは法に対し、正しいことだけ、誤っていないことだけを念頭において仕事をすれば、誰にでもそれなりの仕事はできます。でもプロはその周りを埋める仕事を躊躇しません。

正しい、誤りと答えを即答する前に、先ずは親身になることだと思います。答えはその人の人間力の中にあると思います。
おたくのマンションの管理会社、理事会はA?それともB?
管理会社、理事会がともにAの場合、先ずはお住まいのマンション管理士会にご相談してみてはどうでしょうか。

修繕積立金の余剰金分配はOK?

修繕積立金はどこに帰属するか


修繕積立金余剰金の分配提案

 とあるマンション組合員から相談がありました。
「理事会が修繕積立金は貯めすぎなので現区分所有者に分配したい」という議案を総会に出す予定だが、そもそも修繕積立金を分配することはできるますか?」という内容です。

修繕積立金の用途については標準管理規約28条
 1.一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
 2.不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
 3.敷地及び共用部分等の変更
 4.建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査
 5.その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のためのに特別に必要となる管理とあります。この条文からは分配できるとは書いていません。実際どうなのでしょうか。

裁判にもなった事例

 知ってか知らずか、この条文を無視して総会に上程し、可決した管理組合がありました。この管理組合の規約には28条の条文があり、規約の変更はありません。
一部の組合員が28条に違反する旨を主張して平成23年東京地裁に訴訟を起こしました。

判決
1.議事録内容の瑕疵を認めるとともに、減額する意図であっても28条の取崩しの要件には該当せず、平等に返還する旨の主張は採用できない。
2.修繕積立金の使途は、マンションの修繕等に限定することである。みだりに修繕積立金から散逸することをできない。
という判決により分配を無効としました。

ある理事の発案で、返金という耳障りのよい話を住民にもちかけて、管理組合の財産を取り崩すしてしまったという悲しい事実です。

修繕積立金は修繕に用するお金です。修繕計画に沿った積立金の運用が図るために積立られるべきのものです。理事の一案で取崩しができるものではありません。
修繕積立金を散財したことで、管理組合の将来的な財政は楽観できないものとなってしまいました。
理事の見識の甘さが組合員を道ずれにした例です。

標準管理規約28条

 本当に計画のとおりに運用がしっかりされたうえで、剰余金で配分が可能となった場合、そしてそのお金を分配してさしつかえのないと判断するのであれば、先ずは28条の規約を改正して、余剰金を分配することができるという規約が新たに必要です。

この規約の変更なしでは修繕積立金の分配は規約に違反するものであり無効です。
新任した理事、理事長はどうも目に見える成果というものを欲し、誇示したがるものです。しかしそのおかげで組合員の大切な財産に穴をあけた。となっては責任問題を追及されてしかるべきでしょう。
組合員の決議があろうがその責任は理事会にあるというものです。
組合員は詳しいことを知りません。理事会の言うことを信用せざるを得ません。
そこに付け込んでミスリードを先導した理事会の過ちは大きいといえます。
こんなことがないように組合員も管理規約の周知を図り、理事会含めての運用面の適正化が図られます。

☆自己紹介☆

自己紹介 こんにちは! 加藤典保といいます。 岡山県マンション管理士会で副会長やってます! マンション居住歴30余年でもあります。 マンション管理士と名乗ってもマンションに住んだことがないマンション管理士とは一線を画します(笑) あなたのマンションについてのお悩みや相談など困りご...