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2022年9月29日木曜日

区分所有法の限界

 時代に合わない区分所有法

区分所有法

 区分所有法が施行されて約60年、この間に多少の改正があったとしても基本的に変わることはない。
今から約60年前に現在のマンションの様々な問題を想定しているとは思えず、この法律が今般の問題を引きずっていると感じることも少なくない。

この区分所有法ができた頃に建てられたマンションの現在の立ち位置はどのようなものだろうか。区分所有法によって守られた区分所有者の権利と引き換えに、区分所有法で縛られる自由もある。それはマンションの高経年化に伴う区分所有者の身の振り方であり、物理的なマンションの終わらせ方を示していないところである。

区分所有の終わらせ方

 高経年マンションであり賃貸化が進み、管理組合も名ばかりで管理会社も手をひくような管理不全のマンションがこれから先増えることは容易に想定できる。売ることもできないマンションを抱えた区分所有者に対して管理を怠ったことへの自業自得と冷ややかな目を向けることは簡単だが、過程はどうであれ、結果として区分所有法は、社会資本であるマンションをスラム化を防ぐ縛りは設けても、合法的に区分所有権から離脱するというすべは何も示していない。区分所有がマンションを終わらせようにもその終わらせ方を区分所有法は何も示していない。

区分所有法ではいったん所有したマンションでは売買や譲渡による権利移転以外、その放棄は認められず、区分所有が亡くなるまでそのマンションを引きずることになる。

つまりこの法律によって、守られる権利もあれば、権利を意図的に放棄する自由もないことがジレンマとしてある。マンションという負の遺産から逃れるには売買により区分所有者から逃れること以外になく、マンションを放棄したい、区分所有権を放棄したいと考える区分所有者に応える法的なよろどころがないに等しく、今後マンション維持に要する資金もなく、また、管理不全のマンション売却することもできなくなって身動きができない区分所有者難民を生むことになる。

マンション建替えの幻想

 昨今マンション管理に関わるニュースが紙面をにぎわすことも多くなった。特に高経年化に伴う区分所有者の高齢化とマンション維持コスト高騰によるマンション管理の悲哀の話題である。この先、管理をなす人がいなくなり、管理する原資がなく、管理能力のない無関心な区分所有者、あるいは認識はしつつも何も打つ手がなく、動くことができない区分所有者達によって、マンションの将来は確実にスラム化の道をたどることになる。全国の観光地に廃墟化したホテルが散見されるが、この光景が今住んでいる街に将来見ることもあり得ることだろう。

高経年化のマンションの未来図を描く時にいつも話にあがるのはマンションを建て替えるという選択である。しかし「マンション建替え円滑法」もその合意形成の要件を緩和していくことになっても、建替えするという選択ができるマンションは果たしてどれくらい存在するだろうか。利便性があり、かつ容積率を緩和でき、デベロッパーも参加できるような立地条件、今後予想される高価値が認められ、なおかつ建替え費用を超える価値を見出すことができるマンションは都心でもごく稀である。一般的な郊外に並ぶマンションなどは殆ど建替えることはできないと言ってもいい。安易に建替えを検討する管理組合もあるが、聞けばほとんどが希望と理想を語っているにすぎない状況だ。

 岡山市内の小規模マンション(20戸程度)の再調達金額は約4億円として、1戸当たり2000万円をだして再建しようと賛同する区分所有者がいるとは到底思えないのである。

2022年7月23日土曜日

自主管理について

 小規模マンションの管理


管理会社の撤退

 最近よく見聞きするのが管理会社による管理組合の撤退。管理会社の更新が当たり前のようであった時代からは考えられないような状況が広がりつつある。
住友不動産建物サービス(建サ)が2年ほど前から、今後不採算が見込まれる管理組合、諸事情に問題を抱えた管理組合などの将来リスクを避けるためマンション戸数規模に関わらず契約を更新しないと発表した。この動きに各管理会社からは「よくぞ言ってくれました。」と同調気配。主従の逆転となるこの流れは一気に業界を駆け巡り、管理組合のお客様意識を変えるよい機会になったといえる。
管理会社の多くは淘汰されつつ、適正化法の縛りによりサービスの標準化がなされつつあるが、管理組合には法と契約による管理意識と組合認識が乏しい故、管理会社に主張と批判を繰り返しお客様意識によるクレーマー集団となっていることも多々あると言っていい。

 どこの管理組合でもそうだが、しっかりと運営なされている管理組合は管理会社がどこであろうと関係がない。管理会社によって管理組合が弱くなることはない。管理組合と管理会社は緊張感と距離感をもちながらのパートナーでしか過ぎず、管理主体は管理組合にあるもののそこに上下の関係はない。管理組合さえしっかりしていれば、管理会社に左右されることはないし、管理会社の責任云々の話しはでてこない。理事長が「管理会社がぁ」と声高に叫ぶ様を見る度にやれやれと思うのは私だけではないはずだ。管理会社の非を責める熱量がある分その熱量を管理区組合の建設的な是正に向ければどれだけ助かるかと思うことしばしある。

小規模マンションの場合

 ある事情により管理会社から管理打ち切りを宣告された管理組合のその後の管理形態をみると、大方自主管理へと移行するようだ。というか自主管理しか道はないというのが正直なところ。今まで良かれ悪しかれ管理会社に頼ってきたものが突然自分たちで管理を行わなければならなくなった時、各組合員の負担は想像を超えることに気が付くはずだ。出納は誰がどのような方法で行うか、会計は誰が責任をもって行うのかなど運営の基幹に係る諸事に試行錯誤で名ばかりの管理で責任をないがしろにされ、管理体制と内容はやがて惰性と曖昧さ生み、独善から横暴がはびこり、長年居座り続ける理事長はやがて癒着と横領に至るのが一般的だ。
ただし自主管理の形態も昔とその様は変化している。今では自主管理をサポートする管理会社のサービスも存在する。

自主管理サポートに特化

 1つは、自主管理で最も悩ましい出納・会計業務のみをサービスする管理会社も存在する。フロントは存在しないし管理組合運営にタッチしないので料金は大幅に安くなる。このサービスを起ち上げてる管理会社も大手で限られているものの自主管理で人手も乏しい小規模なマンションとしてはありがたい存在ななることだろう。

2つめは、自主管理に特化したアプリを管理組合に導入し、このアプリ上で出納・会計管理を行うもの。管理会社から購入したアプリを組合員が3カ月程度導入、操作方法の講習を受けた後はスマホで承認から支払い、決済まで行う。スマホの基本操作が必須だが、管理内容の透明性は群を抜いているので、今後このような方法が普及するように思える。現在三菱地所の「KURASEL」が先行しているが、あなぶきハウジングの「SMUSIA」も関東圏でサービスを行うことが発表された。今後、各管理会社も自主管理の管理組合を取り囲むため、アプリ開発を進めて普及を図るとみられる。

このような自主管理支援アプリの導入することにより、出納・会計業務から解放され、組合運営に注力することができる点は大きく、昔のような自主管理という負のイメージを払拭することになるかもしれない。

2022年6月17日金曜日

受益者負担

 機械式駐車場と受益者負担




修繕積立金に計上するだけでは不十分

 機械式駐車場の駐車料金代を管理費に全額計上している管理組合はまだ多く、修繕積立金の積立不足の大きな要因を占めている。その反省から駐車場代を機械式駐車場の管理に充てる他、その残りを修繕積立金に充てる管理組合もふえてきたようにも見える。

 ある管理組合は昨年度まで全額管理費に計上していたものを今期から振り分けて修繕積立金に充てる決議をした。遅まきながら修繕積立金を増やす方向に舵をきったその判断は正解だったと思う。しかしよく話を聞くと、単に修繕積立金に振り替えただけで帳簿上、一般の修繕積立金と機械式駐車場積立金との区分をせず、駐車場代がそのまま一般の修繕積立金の費目に計上していいることが分かった。したがって駐車場料金をいくら積み立てているかということが帳簿上で確認できない状況であった。

機械式式駐車場積立金

 機械式駐車場積立金の費目を設けるという事は、この積立金で機械式駐車場の修理代を補うという意味であり、この限りある積立金で機械式駐車場の補修メンテの面倒を見ていこうとするものだ。この積立金の残高、支出の動向と稼働率を掛けて、将来に向けて機械式駐車場の維持の可否の限界点を知ることができるが、その分岐点まで維持するのであれば、その維持費は駐車場代で徴収した機械式駐車場積立金でまかなうという性質なものである。
言い方を変えれば、機械式駐車場を利用している人達で機械式駐車場の維持をしていくということであり、駐車場を利用していない人は負担しないというのが原則である。
機械式駐車場は、法定共用部でも規約共用部でもなく、建物の付属物である。この付属物(施設)の利用は利用料を支払う事で管理されているので、区分所有者が一律に負担を強いる性質のものではなく、あくまでも利用者(受益者)が負担する性質のものである。

もっとも平置き駐車場と機械式駐車場を併用している管理組合の場合、機械式駐車場の利用を抽選と輪番とかで機械式駐車場を選択せざる得ない状況下と思われるので、平置き、機械式の利用者を問わず、機械式駐車場の維持の負担を分かち合うことになる。

受益者負担

 この機械式駐車場を一般的な修繕積立金にそのまま計上するということは、その修繕積立金から機械式駐車場を修理するという認識の上にたっている。
しかし駐車場を利用をしない区分所有者の立場からみるとこれは甚だ問題だと言わざるを得ない。
機械式駐車場の利便性に疑義を感じ利用することなく、その稼働率がやがて低くなっていくことは容易に想像できる。中心市街地なら車そのものを利用する必要性もなくなり、高齢化とともに車離れが加速していくことになる。その中で駐車場を利用せず、駐車場代を支払わない区分所有者もあるだろう。彼らが積立てた修繕積立金が利用しない機械式駐車場の修理のために多額な修理代に使われたとしたらどう思うだろうか。本来建物の修繕のために積立てられていると思っているのに、そのお金が機械式駐車場の修理に充てられては話が違うということになる。
これら徴収する専用使用料はどのような用途で使われるかを本来であれば規約で明文化しておく必要があるのは言うまでもない。この事は駐輪場で徴収する使用料と同じ意味を持つのかという議論になるが、前提条件(負担条件)が異なるので同等には考えられない。どちらも丁寧な説明が求められる。

駐車場を利用する人が積立てるのが機械式駐車場積立金であり、そのお金を費目別に修繕積立金と機械式駐車場積立金とに分けず、丸ごと修繕積立金に計上してしまうことにより受益者負担の原則が見えなくなってしまった例である。

2022年6月13日月曜日

機械式駐車場の会計

 増え続ける機械式駐車場のメンテ負担



増え続ける機械式駐車場

郊外で比較的敷地に余裕があるマンションでは、駐車場は全戸分平置きで用意されていることと思います。この光景に慣れている私はマンションというものは、おおよそ敷地内に平置きされているものが平均的なマンションの姿だと感じてました。しかし近年では、中心市街に限らず、郊外でも平置き+機械式駐車場という形態が浸透しつつあります。今では機械式駐車場を設置しなければマンションを建てることもできなくなっているようです。一般に商業地区で建設されるマンションの容積率上限で建設されたマンションでは、平置き駐車場は望むべくことなく、機械式駐車場が前提となってしまうのは当たり前になりつつあります。機械式駐車場もマンションの規模により、よりタワー化し複雑化していきます。

マンションを購入するとき、この機械式駐車場はある意味マンションの象徴のように映ったこともあることでしょう。だが、それはマンションを購入するまでの夢事のように映っていたことでしょう。誰も今後この機械式駐車場を維持するためのコスト負担で悩ますなど考えるべくもありません。

メンテナンスの基本は部品交換

 標準管理規約では駐車場などの専用使用料はその管理にかかる経費は管理費へ、残りは修繕積立金として計上することを謳ってます。平置き駐車の例をとれば、駐車場の管理といえば、白線とか輪留めとかが想定されますが通年予算化するほどの修理、補修も考えることはありません。しかし機械式駐車場であれば、メンテ代(基本料+油脂類/年)が想定されます。これらは予算化できる範囲なので管理費からおとすことを前提として予算化することはできます。しかし修理代金は部品単位でその人件費と併せて低額なものから高額なものまでとその差は大きく年間の予算額の設定することは非常に難しいのが現状です。メンテナンス業者の契約にもよりますが、経年劣化および可動部の劣化による対処は補修ではなく交換が前提となるため、例え小さな傷、ひびが入っていれば、安全面から補修ではなく交換を推奨していきますので、汎用的な部品ではないため部品代と人件費の対価はおおよそ高額になるのは必至です。これらは予算化できないので管理費から支払うことはできません。修繕積立金(機械式駐車場積立金)から支払います。

このことからメンテ代を管理費、修理代を積立金などの特別会計から支払うという前提ができていない管理組合では、今後機械式駐車場の修理費負担が管理費または修繕積立金を財政を逼迫させる要因になってしまいます。


機械式駐車場の会計

前述のとおり、駐車場の料金を一部管理にあてた後、残りを修繕積立金に振り替えた場合、今後は、この積立金から修理代を支払うという明確な意図が必要です。機械式駐車場の使用料支払ったお金は管理組合の修繕積立金(駐車場積立金)として積立られ、その支払いは機械式駐車場の修理、改修のためにしか支払うことができないという明確な意図がなければいけないということです。
また、修繕積立金に振り替えた後、帳簿上で一般の修繕積立金と機械式駐車場積立金とを別会計に費目を分けて設定することが望まれます、これを怠ると一般修繕積立金と機械式駐車場積立金がそれぞれいくら貯まっているかが判断できません。費目を分けて一般修繕積立金と機械式駐車場積立金がそれおそれいくら貯まっているか判別できるよう帳簿することが大切です。
また、駐車場専用使用料代金のうち全額を機械式駐車場の充てるのか、5対5の割合で一般修繕積立金と機械式駐車場積立金に振り分けるなどの操作を行い、一般修繕積立金も蓄えられるよう年度毎の状況で比率を変えればいいと思います。



2022年5月13日金曜日

がんばりすぎる理事長

 理事長さんもいろいろ


 マンションの規模も様々です。

100世帯を超える大規模なマンションもあれば、20世帯ぐらいの比較的小さなマンションなどさまざまです。

所有目的も永年住居型、投資型、リゾート型、ビジネス用1ルーム型などなど。

どんなマンションにも分譲である限り、専有部分を所有する区分所有者が複数人存在し、必然的に管理組合が存在します。そして、管理組合の執行機関として理事会も存在することになります。機能しいているかどうかは問わずとも、一応でも理事会は存在するわけで、理事長も存在しているはずです。

理事長さんの勘違い

 輪番制で理事長になった方は、何事もなく無事に任期を終えることを望んでいる方もいることでしょう。管理会社に丸投げしておいて、管理会社からまわってくる決済書類にハンコを押し、担当者のうんちくにうなずいていれば、理事長の職務を全うしたと持っている方もいることでしょう。ハンコを押すたびに、ご自身はさぞ理事長としてのステイタスを感じることが勘違いの始まりです。

勘違いする理事長は他にもいるようです。


MUST理事長

 「MUST理事長」とは、「~でなくてはならない。」「~するべきである。」と思い込みが激しい理事長さんです。

「住民間のルールは~でなくてはならない。」「そのルールを破った〇〇さんは~するべきである。」などなど。いろんな場面でこういう事柄に出くわします。

~しなくてはならない、あるいは、~するべきであるという観念に固着し、すべてが理事長の恣意的ともいえるMUST用語が羅列します。

他の意見を聞き入れる寛容さは失われ、自分の思い描いているイメージどおりでないと気分を悪くするようです。

制約を強い、恣意的な教条主義に走ってしまう大きな勘違い。

こういう方が理事長になると、自分の物差しから外れる事は我慢できないようです。

そして、自分が「正義」だと勘違いされていることです。やがて住民からうさんくさく思われ孤立化してしまいます。

でもこういう熱血漢の理事長がいるこらこそ救われることも多いのも事実です。

即断即決、思い込んだら一直線なので、何事も迅速で、躊躇がありません。

それは頼もしくもありますが、示唆に欠けて判断が危なっかしく思えます。


がんばりすぎる理事長

「自分は管理組合のために理事長として汗をかいてがんばっている。こんなにがんばている自分は一目置かれて当たり前であり、自分の意見は疑う余地は無いから皆は自分の言う通りにしなくてはならない。」非常に困ったチャンでメンドクサイ人なのです。

やたらと熱度が高く、声が大きい。がんばり感モリモリなのです。

 経験上ですが、このようながんばる理事長を観察してみると、

  ・定年退職して家でブラブラ

  ・ついつい攻撃相手を探してしまう

  ・サラリーマン時代は管理職

  ・マンションが会社に、住民が部下に見えてしまう

  ・俺が、俺がの自我の塊と熱度で押しまくる。

  ・自分の事はよく話すが、他人の話はほとんど聞いていない

理事長として熱度をあげることは非常に喜ばしいことですが、その熱度のはけ口がちょっと違います。やたらとがんばり感を出す理事長もちょっと勘違いしているようです。


理事長さんはがんばらくていい

〇「じゃぁ、誰がやるんですか?誰もやらないから自分がやってるんですよ」と息巻く。

「その熱心さは感服します。ただ管理組合の運営は事案の可否を決めるのは二の次です。」

〇「誰も決められないから自分が決めるしかないでしょう。他の理事は、理事会にも出席しないので決まるものも決まらない。」

「先ほども言いましたように、決めるのは二の次です。決めるまでの過程、手続きを大切にしましょう。皆で相談して決めたという過程を大事にしましょう。」

「その熱意を住民の方々とのコミュニケーションを図る方向に向けたらどうでしょうか。住民の同意を得られるように、時には腰を低くし、説明する時間と、根気よく意見を聞く姿勢も大切でしょう。」

「住民の皆さんを巻き込んで管理組合と理事会を活性することが一番の仕事だと思いますよ。」

〇「自分ががんばってるから、この管理組合が機能しているんですよ。他人に任せられません。」

「あなたは充分頑張りました。ご苦労さまです。今度はみんなが頑張れる場をつくるのが理事長さんのお勤めかなとも思います。もうあなた自身が頑張らなくてもいい環境をつくりましょう。」

あなたのマンションの管理費は

駐車場使用料はどこに計上している?



 管理費についての相談はよくあることです。
「うちの管理費は高いのか安いのか、そもそも適正な価格なのか、相場が知りたい。」という内容が最も多いと思います。

先ず管理費は原則、建物の維持管理、メンテナンスにかかる費用と,管理会社に支払う委託管理費(管理会社により費目名がちがいます)
メンテナンスにかかる費用には毎月、定期的にかかる施設点検、清掃(エレベーター、給排水施設、受水槽など)や消防設備点検などにかかる費用など定期点検、法定点検にかかる費用が含まれます。
この他にも清掃、植栽、そして共有部分の電気代などがあります。

維持管理にかかる費用では、小口の修繕費、消耗品(電灯、清掃用具など)、他には管理費収納に関わる事務手数料(振込、引き落とし)など。
これらの費目は年間通じて予想される金額なので予算化するのにあたり、ある程度の金額を予想することができます。いいかえれば、おたくのマンションは年間いくら維持管理費がかかるかという事がわかります。
この年間の維持管理費とは別に管理会社に支払う委託管理費の合計が管理費となります。


駐車場使用料を管理費に計上するワケ


 例えば、マンション1棟分(仮に50世帯)の管理費25/月のうち18万円が種々の維持管理、メンテナンスにかかる費用で残りの7万円が管理会社に支払う委託管理料とします。
そうすると1世帯あたりの管理費は5千円/月という金額が設定されます。実際には予備費を計上して少し上乗せして多少の繰り越しが出るように設定します。

しかし、マンション分譲時のデベロッパーは、お客の購買意欲をそそるため、この管理費をわざと安く設定するのが通常です。
その安くした分の穴埋めに使われるが駐車場使用料です。これが管理費のカラクリです。
例えば駐車場使用料は6千円/月と設定し、それを全額管理費に回すような会計処理を行うことで実質駐車場使用料だけで管理費を補うことがでます。
管理費を3千円/月に設定すれば2千円/月も安いということななります。この余ったお金は次期繰り越しとなりますが、長年このような会計処理を行うと管理費の繰り越しが必要以上に貯まることになります。

必要以上に貯まった管理費のもとで毎年管理会社からいろんな提案がなされるようであれば、それは管理費をもっと使いましょうと言っていることです。
そもそも管理費は通常の維持管理に用されるものなので、特別の用に使われるのであれば修繕積立金から引き落とされなければなりません。
管理費を使っての工事はせいぜい小規模な修繕や更新工事程度のものであり、あらたな施設を新設するような工事は修繕積立金から引き落とすべき性質ものです。

ある程度貯まった管理費を吐き出させるため、管理会社はなんらかの提案を持ち込み、施設工事やら更新工事に使おうとします。そうして駐車場使用料は管理費として喰われることになります。
国交省ではこの管理費と修繕積立金との計上する費目を細かく規定しています、ただ駐車場料金を管理費に計上していても違反とするような規定はありません。
マンション個々の実情を鑑みてのことでしょうが、駐車場使用料は修繕積立金に計上するのが望ましいというコメントを出しています。


駐車場使用料は貯めるもの


 本来管理費は貯めることが目的ではなく、貯める目的なものは、修繕繕積立金です。
したがって駐車場使用料は全額そのまま修繕積立金に積み立てていくことがマンションの資産価値を高めることに直結します。
駐車場使用料で管理費を穴埋めしていては、肝心な修繕積立金を貯めることができなくなります。今、修繕積立金が足らなくて修繕工事ができなき管理組合が非常に多くあります。
足らない理由の一つとして、駐車場使用料を管理費に計上していたということも一因となっていることもありましょう。早くからこのことに気づいて是正していればと思います。
大規模なマンションでは、そもそも駐車場を無料とするところもあります。

しかしながら小さなマンションで、管理費が危ういところは、あえて駐車場使用料を管理費に計上しているところもあります。修繕積立金の余裕もなく管理費にも困るマンションでは、しかたのないことかもしれません。


修繕積立金は駐車場使用料に含む


 修繕積立金の設定は、この駐車場使用料込みで考えていくことが大切です。
このマンションの場合、修繕積立金を1戸あたり4千円/月と設定すれば、駐車場使用料と合わせて1万円/月となり、マンションとして合計で年間600万円を貯めることができます。
1215年周期の大規模修繕時には7200万円~9000万円超を貯めることができます。
積み立てる金額は多ければその分支出に対してもいろんな選択ができます。お金がなければ何もできません。今はそんなに貯めなくてもいいと考えても、マンションにかかる費用は修繕工事だけではなく、機能的なリニューアル工事、セキュリティとバリアリーフのための機能向上を有する工事などに費やすことができます。

時代に必要とされるマンションの機能と形態に対応しなくては、やがてそのマンションは陳腐化していくでしょう。当然マンションの資産価値は下がります。ただ外観がきれいだけで、機能的に時代遅れのマンションに需要があるとは思いません。

そのための工事は大規模修繕工事とは別に考えなければならない工事でしょう。高経年マンションの場合、やがてくるだろう建替えの費用も選択肢に入ってきます。だからこそ、中長期的な視野にたっての資金づくりが必要になります。
これらの積立金額の計算は、個々の経済事情、建物劣化、人件費等で変動するものです。修繕計画は5年単位でその金額を見直す作業が必要になるでしょう。


管理会社も知っているカラクリ


 駐車場使用料を管理費に計上するカラクリは管理会社も周知のとおりです。
もっとも、知っていても会社に不利になるようなことをマンション住民の方々にあえて説明することはないでしょう。
  • 駐車場使用料で管理費を埋め合わせ、管理費が安いことを強調。
  • 様子を見て、他に比べて管理費が安い事を理由に管理費を値上げ提案。
  • 駐車場使用料が、管理費に喰われているので修繕積立金は貯まらない。
  • 様子見て、修繕積立金も値上げを提案。
このようなカラクリでマンション管理業界はまわっています。
 お宅のマンションの駐車場使用料が管理費に計上されているのか、修繕積立金に計上されているかを調べてみてはどうでしょうか。
 

2022年4月8日金曜日

「書面にかえて」の誤解


集会せずに決議をする?
 

 コロナ騒動で非常事態が続いています。年度末の総会が延期のまま開催日時が決まらず、決算報告も新役員の引継ぎもできずに組合運営に支障をきたしています。この時期、早く総会を開きたいという理事長もいることでしょう。

どうしたら総会が開けるのかと理事は頭がいたいところでしょう。
とあるマンションのことです。そのマンションの管理組合の理事は、以前に管理会社の担当者から言われたことを思いだしました。「集会することなく、書面に変えて議決することができますよ」「全戸に議案を送付し、書面で議決してもらう、過半数あれば議案承認ということです」なるほど。総会を開かなくても、「書面で決議」する方法で決議ができるのだ。と思ったことでしょう。

 この理事は、早速理事長にこのことを伝え、早急に書面による決議を実行するよう進言しました。場所、日時を指定せず、集会することなく決議ができるなら都合がいいとばかりに理事長はその準備にかかりました。でも、これダメです。りっぱな区分所有法違反ですから。この理事は、管理会社の担当者の本意を曲げて、都合のいいように解釈したようです。もっとも、「書面にかえて決議ができる」これ自体は正解です。

ただし条件があります。書面にかえての決議とは。では区分所有法ではどう言っているのか見てみましょう。


区分所有法50条

1.規約により総会において決議をすべき場合において、組合員全員の承諾があるときは、書面による決議をすることができる。

2.規約により、総会において決議するべきものとされた事項については、組合員全員の書面による合意があったときは、書面による決議があったものとする。

1において、「集会の代わりに、書面だけで決議してもいいですか」という問いに対し、区分所有者全員が「はい、いいですよ」という承諾が事前に必要ということです。場所、日時を指定せずに集会のかわりに書面決議する場合は事前にこのような手続きを踏まなければなりません。

繰り返しますが承諾の条件は、区分所有者の過半数ではなく、全員の承諾が必要ということです。反対者が1人いても、無回答者が1人でもいたら決議はもちろん、決議する場、方法としてダメということになります。

2において決議する事項では承認(否認)は過半数ではなく全員となります。全員が承認に賛成してこそ承認が決議されるということ。これも過半数ではありません。つまり1において全員が「集会をせず書面で決議していいよ」という承諾を得たのち、2で各議案でも全員が承認しなければその議案は承認されないということ。

この条件けっこうハードル高いですよね。この条件をクリアすること自体、先ずムリです。総会でも欠席者はたくさんいますし、議決権行使書の返事がないのは当たり前です。全員の承諾、承認なんてのはほぼありえません。
これは電磁的方法(メールとかwebとか)にも準用されます。例えweb上での総会を企画していても事前に全員の承諾がいるということですから気をつけてくださいね。


議論なき集会は集会にあらず


 こんなに条件が厳しい背景には、物事を決めるには、いろんな意見を聞いたり、話したりして判断の材料を揃えてから決める。つまり集会での論議を重視してのことでしょう。書面の決議では論議できませんから。双方向の意見交換の場にはなりませんよね。
総会は、決めることより、決めるまでの過程、手続きが大切ですということです。
安易に、議論もせず多数決で決めることは民主的じゃないから止めましょうね。ということを区分所有法で言っているのでしょうか。

岡山市マンション管理実態調査

 マンション長寿化施策 マンション管理の行方が都市計画を左右させることは容易に想像できる。 マンション化率が30%を超える東京都心であれば、マンション施策は都市計画に直結する。 都心に限らず、中核都市、政令指定都市、自らマンション施策を発信している地方都市も少なくない。大なり小な...